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望むのは長期ビジョンに立った安定した行政の施策
ねぎっこ村をきっかけに販売先の多様化にも取り組んだ。現在はJAあきた白神に70%、能代市と秋田市の市場に10%のほか、20%はねぎっこ村、地元のスーパー、学校給食などにも出荷する。JAの比率が高いのは、白神ねぎがブランドとして認知されていることで、品質を上げれば高値が期待できるためだ。
白神ねぎの出荷先は主に首都圏と名古屋で、8~10月が最も多い。秋冬ネギ、冬期間に出荷する雪中ねぎ、越冬したネギを出荷する春ネギ、夏ネギと周年出荷ができる体制が確立されている。特に砂丘地の雪中に作られた囲いでネギを貯蔵する雪中ねぎを取り入れたことで、冬場の雇用が確保できた。
以前は冬の市場は深谷ねぎなどの“横綱級”に押され、白神ねぎは競争力をなくしていたが、雪中ねぎに価格が付くことで対抗できるようになったという。また、冬期は土ネギ(泥ネギ)の出荷も手がけており、他の農業法人で契約しているものの、冬は仕事がない外国人実習生の冬期のみの受け入れも行なう。
就農して42年。20歳のときに描いた雪国、秋田での周年栽培と、通年雇用が実現したのでは?と尋ねると、「まだ道半ば」という答えが返ってきた。価格が安く、これじゃ、間に合わない(収益が上がらない)からだ。そして、「個人的な考えだが」と前置きして「農業は人が多すぎる」と話す。
「行政は農業者を育てたいと言うけれど、人が多くて物が多すぎるから価格が安い。コメは補助金ありきだし、野菜は経費が120円のものを98円くらいで売られてしまう。しかも、資材が高騰しても価格には転換できず、上がるどころか下がっている。これじゃたまりません。農家は規模拡大すればなんとかなると一生懸命頑張ってきたけれど、それでも間に合わない。新しいことをしようとしても、政策がコロコロ変わるので、怖くて手を出せない。せめて立ち上げた事業を10年は維持し、過度の予算を付けずに農業者に自由にやらせれば、力のある農業者が残るのではないでしょうか。長期ビジョンに立った施策をし、再生産可能な価格を実現してほしいと切に思います」
農業は幸せの種を蒔く仕事と次世代に伝えたい
大和農園は「和を創り、和を拡げる」「幸せの種を蒔く」「心を耕す」を社是に掲げる。大塚自身が農業をしながら気づいたことを社員に伝えるためにまとめた言葉だ。和は、のどか、おだやか、あたたか、なごむ、仲よくするなどを意味する。ほかに秋田弁で自分のことを“わ”と呼ぶことにも由来する。農業はおいしい作物を作り、人の心を和ませることができる。そのための幸せの種を蒔く仕事が農業だと大塚はいう。
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大塚和浩 オオツカカズヒロ
(有)大和農園
代表取締役
1961年、秋田県能代市生まれ。1982年、秋田県立農業短期大学を卒業後就農。1991年、秋田県初の野菜専門の農業法人として大和農園を設立し、代表取締役社長に就任。同年、全国農業コンクールで農林水産大臣賞を受賞。1993年、秋田県経営農業士に認定される。2000年、産直ハウス「ねぎっこ村」を設立し、2006年に法人化する。2019年、大日本農会 農事功績者表彰緑白綬有功章受章。現在は秋田県農業法人協会顧問(元会長)、JAあきた白神ねぎ部会部会長、秋田県農業士連絡協議会会長、能代南地区商店会会長などを務める。
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