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しかし、北米の大豆やトウモロコシ生産はGM作物が一般的な栽培体系として成立しており、グリホサート耐性雑草が出現しても対処法が確立されている。具体的には、作物のローテーション、除草剤耐性GM作物の種類のローテーション、メカニズムの異なる除草剤のローテーション、物理的な除草や栽培法の工夫などによる除草、を組み合わせることで耐性雑草の出現を抑制し、生産効率を維持している。
仮にグリホサート系除草剤が使えなくなった場合、アメリカ雑草科学学会の調査によると「北米のトウモロコシ及び大豆生産に限っても経済的損失は推定で430億ドル(約6兆3000億円)」に達するという。また害虫抵抗性のGM作物の栽培でも、耐性害虫が発生しないように、そして発生した際の対処法がきちんと確立されている。
2022年10月にフィリピン(ルソン島)で害虫に強いGMトウモロコシ(虫を殺すBtタンパクをもったコーン)を栽培する複数の農家を取材した大規模農家の徳本修一氏は、どの農家も「Btコーンを栽培してから農薬の使用量が減り、収量や収入が増えた」と一様に答えたという。
なお、トウモロコシの葉や茎に含まれ、虫を殺すBtタンパクは有機農業でも使われており、人体に無害である。鈴木氏のGM作物をめぐる言説は、あまりに栽培現場の実態を知らない者の意見だ。
さらに鈴木氏は、「米国では大豆、トウモロコシ、小麦に直接散布して収穫する(小麦は米国もGMにはしていないが、乾燥のため小麦に散布して収穫する)」ため、世界で最も米国の穀物に依存する日本は、「輸入品を通じて、GM作物とグリホサートを世界で最も摂取している国の一つではないだろうか」と指摘する。
米国産大豆、トウモロコシはGM作物がほとんどで除草剤を直接散布しているが、小麦は違う。小麦の収穫期を調整する目的でグリホサートが収穫前に直接散布(プレハーベスト)されるのは米国の作付面積の3%以下にすぎない。もちろん米国産の輸入大豆やトウモロコシ、小麦とそれらが配合された飼料に残留するグリホサートは日本の食品安全委員会が定める基準値を大幅に下回っている。「輸入品を通じて、GM作物とグリホサートを世界で最も摂取している国の一つではないだろうか」という指摘は具体的なデータ、科学的根拠のない憶測である。
【実現不可能な飼料自給率100%】
鈴木氏は常々、食料自給率100%を目指すべきだという。その主張の一環として、種や鶏のヒナ(前回の検証で触れた)、畜産飼料の低自給率を問題視している。以下は「我々は何を食べて生きたらいいんだ」(JAcom 2021年2月18日)での発言。
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