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それに加えて、飼料の海外依存度を考慮すると、牛肉(豚肉、鶏卵)の自給率は現状でも11%(6%、12%)、このままだと、2035年には4%(1%、2%)と、信じがたい水準に陥る。
だが、農林水産省資料によると、2007年時点の飼料輸入量分を国内で作るには、実に429万haもの畑が必要と試算しているのだ。では、日本の農地面積はというと、439万ha(2019年 農林水産省「食料自給率目標と食料自給力指標について」 )である。
つまり、農地のほぼ全てを飼料用に転用してようやく飼料自給率が100%になる計算。1965(昭和40)年以降の農地減少分約160万haを全て農地として復活させ飼料用にしても飼料自給率は50%にも満たない。飼料自給率100%は実現不可能であり、農業政策として追求すべき数値目標ではないのだ。
【根拠不明の数字で不安を煽る】
しばしば鈴木氏は「日本政府はアメリカの言いなり」で、「食の安全に関してアメリカに甘い」などと批判する。たとえば次のような記述((月刊JA 2012年2月号 TPPと「食の安全・安心」)。
アメリカから日本に農産物を輸送するときのポストハーベスト(収穫後)農薬、食品添加物などの安全基準も、アメリカが採用している緩い基準への調和が求められる可能性がある。食品添加物でいうと、日本では800種類くらいしか認めていないが、アメリカは3000種類認めているし、農薬の残留基準についても、ものによってはアメリカでは日本の60~80倍も緩い基準が採用されている。こうして日本の多くの安全基準が緩和される可能性がある。
食品添加物は、私たちの食生活を支える大事な化学物質である。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長の畝山智香子氏の著書『食品添加物はなぜ嫌われるのか 食品情報を「正しく」読み解くリテラシー』(DOJIN選書)は、上記の鈴木氏の言説に疑問を呈している。
この分野の専門家である畝山氏はまず「食品添加物でいうと、日本では800種類くらいしか認めていないが、アメリカは3000種類認めている」と鈴木氏が明言した、この数字の出典・根拠がわからないという。そのうえで鈴木氏が何らかの計算のもと出していると推察する。
厚生労働省のHP内「Q4食品添加物の海外の基準は日本よりも緩いのですか?」にはこうある。
「2021年1月15日現在、日本の食品添加物の数は829品目(香料を含む)あります。また、米国の添加物の数は、約1600品目程度(香料を除く)(2013年2月時点)であると考えています。この品目数の中には、(1)果汁や茶など日本では添加物に含まれないものや、(2)日本では1品目として計上されている品目が、米国では、物質ごとに指定され数十品目となっているものが含まれています」
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