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特集

続・おいおい鈴木君 鈴木宣弘東大教授の放言を再度検証する


アメリカ農家のコメ60 kgの生産コストは、農水省の「経営規模・生産コスト等の内外比較」によると、1900円(2020年)となっている(左グラフ)。日本農家の生産コストは経営規模によって差があるが、9200円~2万7500円、全国平均では1万5000円である。鈴木氏の主張するようにアメリカ農家の生産コストが1万2000円なら、日本農家とさして変わらない。
農水省の数字が間違いで、鈴木氏が提示する数字が本当に正しいのだろうか。

【肥料原料パニックはなかった】

さらに同書では化学肥料原料の輸入に関しても述べている。
リンと尿素も化学肥料の原料で、ほとんど100%輸入に頼っており、これらは中国に大きく依存していたのですが、中国が、「自国での需要が大きく上がっているために日本にはもう輸出できない」と言い出したのが2020年のことです。そのため、価格が2倍に跳ね上がるなど相当に厳しい状況に陥り、今や、そもそも原料が入ってこないので、製造中止せざるを得ない配合肥料も出てきている状態です。
農水省の「肥料をめぐる情勢」の4「化学肥料原料の輸入相手国、輸入量」をみてみよう。こんな説明がされている。
▽主な化学肥料の原料である尿素、りん安(りん酸アンモニウム)、塩化加里(塩化カリウム)は、ほぼ全量を輸入。世界的に資源が偏在しているため、輸入相手国も偏在。尿素はマレーシア及び中国、りん安は中国、塩化加里はカナダが主な輸入相手国。
▽令和3(2021)年秋以降、中国による肥料原料の輸出検査の厳格化のほか、ロシアによるウクライナ侵略の影響により、我が国の肥料原料の輸入が停滞したことを受け、代替国から調達する動きがみられる。
では、鈴木氏のいうように「2020年以降、中国は日本に輸出しなくなった」のだろうか。農水省の上記資料には、2020~2021肥料年度の変化が示されている。
中国からの輸入割合は、尿素で37%から25%(トップのマレーシアの割合が上昇)に、りん安では90%から76%(新たにモロッコが主要輸入相手国に加わる)に下がっている。輸入量も減ってはいるものの、日本への輸出をストップする事態は起きていないし、その前兆もない。中国に依存していない塩化加里の輸入量は約20%増加した。
「価格が2倍に跳ね上がるなど相当に厳しい状況に陥り」はどうか。前記した農水省資料の9「肥料原料の輸入価格の動向」には、「肥料原料の輸入価格は、2021年(令和3年)以降、上昇傾向となったが、本(2023)年1月以降下落に転じている」とある。輸入に頼る肥料原料は国際情勢の変化に対応すべく調達の多角化が進み、価格高騰は一時的なものにすぎず早期に沈静化した。肥料原料パニックはほぼ発生しなかったというのが実情だ。なお円安の影響は肥料原料の輸入に限った要因ではない。

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