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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

スウェーデン(2) ヘンプ繊維の断熱材でカーボンニュートラルを目論む


需要が拡大する一方で、エコリューション社の課題は断熱材の製造工場が国内にないところである。ヘンプの良さを活かすためにも栽培から最終製品までを国産化するサプライチェーンの構築を目指している。

日本のお寒い断熱事情

欧州全域の温室効果ガス排出量のうち建設業によるものが36%、エネルギー消費量では同じく40%以上を占める。EUは建築物のエネルギー性能指令(EPBD)に基づいて、21年以降の新築物件にはすべてゼロ・エネルギー建物とすることを求めている。
日本でも、新築住宅に断熱性能の基準達成を義務付ける建築物省エネ法が22年10月に施行された。床・壁・天井・サッシ等の断熱の強さ(断熱性能)を表すUA値に、0.60(等級5)、0.46(等級6)、0.26(等級7)が新設された(図3)。UA値は、断熱性能が高いと数値が小さくなる。30年度に、新築において等級5以上の義務化に向けて調整中だ。
世界的には、米国・英国・ドイツ・スウェーデン・フランスでは、UA値の基準を0.35~0.45に引き下げ、義務化されたのも2000年代と早かった。これは、等級5以上を求める日本のZEH(ゼッチ)住宅を上回る等級に該当する。つまり、脱炭素を意識した断熱性能における日本のレベルの低さが際立っているのだ。
その原因の1つには、国家資格である一級建築士試験に、住宅の熱(空気)、音環境、光環境を学ぶ建築環境工学分野が試験科目として追加されたのが09年と遅く、それ以前に国家資格を取得した建築士らの住宅の断熱性能に対する知識が不足していることが挙げられる。
ヘンプ繊維の断熱材は、既存のグラスウールやロックウール等の断熱材と比べて、断熱性能は同等ながら、環境負荷が低いという利点がある。導入コストがやや高いため、国産化を進める場合はドイツのように自然系断熱材の購入価格の1/3を補助するなどの政策的支援が有効であろう。

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