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市民農園という都市近郊型農業経営の選択肢
「市民農園」という言葉は、現在多くの人に認知され、もはや一般化され定着したといっても過言ではありません。
近年、食の安全やトレーサビリティへの意識は、数年前よりも生活に浸透しているように感じています。コロナ禍には中食産業が発達し、保存方法などの技術の向上に注目が集まりました。さらにさかのぼると、2010年代以降、毎年のように「食の安全」に関するニュースやトピックは、事欠きません。
また、他国の情勢からの影響もあり、燃料費は過去に類を見ないほど高騰を続けています。ガソリンのレギュラー1リットルあたりの全国平均価格は、4年前の19年9月は143.7円だったのに対し、23年8月には182.9円まで上がりました。電気代も比例して高騰し、市民の生活を圧迫するだけでなく、多くの産業にも影響を与えて物価高をもたらし、負の連鎖が続いています。
このような時代背景もあり、野菜を「購入する」だけでなく自ら「生産する」という行動へと消費様式が変動していった――というのは、あくまでも片面的な考察ではないでしょうか。
たしかに、消費者の意識や消費様式の変容は、市民農園の隆盛に一役買っているかもしれません。ただ、それだけでなく、このような情勢を見越していたかのような近年の法整備が、現在の市民農園などの「生産への参画」という消費様式への変容に大きく影響を与えているように思います。
【都市農地貸借の円滑化に関する法律】
市民農園数が増加する前夜である18年に、都市農地貸借法が施行されました。これまで親族間以外での貸借が基本的に認められていなかった(厳密にいえば税制優遇を継続して受けるため)生産緑地を、特定生産緑地として税制優遇を受けたまま農地法第3条の条件を満たす他者への貸借を認めたのです。
もともと市民農園は、農地法上の特例でもある特定農地貸付法(89年)に基づき開設されてきました。翌90年には農機具庫や休憩所など付帯設備の整備を進める市民農園整備促進法を制定。その後05年には、特定農地貸付法の改正で、地方公共団体や農協以外でも開設可能になりました。
近年でも最も多い開設主体は地方公共団体ですが、農業者や企業・NPO等による開設が増加傾向にあります。
市民農園整備促進法は、健康的でゆとりある生活を確保し、良好な都市環境の形成と農村地域の振興を目的としています。同法における「市民農園」とは、具体的には以下(1)(2)を指します(第2条)。
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矢萩大輔 ヤハギダイスケ
(有)人事・労務
代表取締役
大手ゼネコン勤務後、1995年に社会保険労務士として都内最年少で開業。起業支援ポータルサイト「ドリームゲート」アドバイザーとして新規就農にも相談に乗っている。農業を通したリーダーシップ研修の場として自社農園「アルパカファーム」を運営。八戸農業ビジネスナイトセミナーや、FM東京「あぐりずむ」の出演プロデュースなども。著書『脱家族経営!若者に魅力ある農業経営のレシピを教えます。』ほか。
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