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農業経営者ルポ

鍬で耕す男

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第1回 1993年05月01日

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「鍬を使うようになってネ、手が腱鞘炎になっちゃった。これで俺も立派な文化人だよネ、ハッハッハ…。でもそれで腰痛が直っちゃたんだよネ」安原栄一さん(42歳)は笑った。安原さんは“鍬で耕すこと”にこだわっている。鍬を使って土を反転させ、肥料は深部に施して幼根に触れさせないようにしている。このように自然の摂理に合う耕し方をしようとしたら、手元にあるのは鍬だけだった。たしかに彼はロータリーを使っている。しかし彼は言う。「ロータリーは。鍬で土を反転させるための前処理として軟らかくしているだけだ。『耕す』ってのは、動作で言うなら土を反転させること。意味で言えば、作物が育ちやすい畑の条件を作ることだ。だとしたらロータリーをかけることで『耕した』って言えるか?」だから、彼は一五年間、鍬を振るってきた。
 「鍬を使うようになってネ、手が腱鞘炎になっちゃった。これで俺も立派な文化人だよネ、ハッハッハ…。でもそれで腰痛が直っちゃたんだよネ」

 安原栄一さん(42歳)は笑った。

 安原さんは“鍬で耕すこと”にこだわっている。鍬を使って土を反転させ、肥料は深部に施して幼根に触れさせないようにしている。このように自然の摂理に合う耕し方をしようとしたら、手元にあるのは鍬だけだった。

 たしかに彼はロータリーを使っている。しかし彼は言う。

 「ロータリーは。鍬で土を反転させるための前処理として軟らかくしているだけだ。『耕す』ってのは、動作で言うなら土を反転させること。意味で言えば、作物が育ちやすい畑の条件を作ることだ。だとしたらロータリーをかけることで『耕した』って言えるか?」

 だから、彼は一五年間、鍬を振るってきた。


鍬を使って作物が見えた


 彼が鍬を使うようになったのは一五年前。農業を始めた一八歳から二八歳まで、彼にとってもロータリーで土をかき回すことが耕すことであり、施肥した後、ロータリーで整地してホウレンソウを播種するという「作業の手順」を農業の仕事だと思っていた。

 ところで彼の冬作はホウレンソウとネギが主体である。ホウレンソウでは一〇aで八〇〇〇束以上をコンスタントに出荷するという人だ。

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