記事閲覧
【耕すということ】
和犂の発達
- 農学博士 村井信仁
- 第2回 1993年07月01日
- この記事をPDFで読む
耕すことの意義
なぜ耕すか、と問われれば、それは作物の生育に好適な環境を与えるためと簡単に答えることができる。それがどのように耕せばいいのかと尋ねられると、意外と答えられない。耕すことの意義が分かっているようで、分かっていないということであろう。
作物の根の呼吸や養分の吸収のためには酸素が必要である。土壌中に水分が適正に分布し、これが適度に流通するものでなければならない。とされるが、耕すことによってその条件を満たすと考えるのが順当である。ここから必然的にある深さに耕し、根圏域を広めて、その効果をよりよく発現させるとすれば分かりやすい。
耕すということは端的には作物のための土壌の物理性の改善である。結果として、土壌中の有機物を分解する微生物などの活動が盛んになり、土壌の微生物性、化学性が改善される。マメ科作物などは根粒菌が活動し、作物に窒素を供給するようなことになる。
耕すことを播種床造成と決めつけられることがあるが、耕すことが播種や移植のためであるに違いないとしても、それが目的のすべてではない。播種機や移植機を使いやすくし、発芽や活着をしやすくするだけのことであれば、必ずしも深耕は必要ないからである。耕すことは、作物の生活環境を長く保障する基本条件の整備とみるべきである。
耕すことは、言葉を換えると潜在地力の活用であり、持続的農業を営むための地力保全のための基本技術といってよい。固結している土壌を深耕することによって、土壌は本来の能力を発揮する。一方、耕すことに反転・鋤込み機能を加えることによって、下層土は表層において風化が促進されて有効土に変身し、表層の有機物は、下層に鋤込まれて腐植、無機化して肥料分になるのである。
会員の方はここからログイン
村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
耕すということ
ランキング
WHAT'S NEW
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2020/12/17)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2020/08/07)
