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化学肥料と除草剤が「耕すこと」を忘れさせた
農は耕すことに始まり、その基本は深耕、反転・鋤込み耕であることが、わが国において疎んじられ始めたのはいつのころからであろうか。第二次大戦後の耕うん機の発達と指摘する人がいるが、これは二次的なものである。
化学肥料と除草剤の発達が、耕すことの基本技術を忘れさせたといってよい。
つまり、化学肥料が手軽に使える時代にあっては、作物の生育に土壌の能力をあまり気にしなくともよくなったことであり、除草剤があるからには、反転鋤込みによって雑草の繁茂を抑制する必要がなくなったからである。わが国の場合、肥料反応のよい禾本科の稲作が主流であったこと、その稲作の水田は水を使っていることによって除草剤が安定した効果を示したことなどが、耕すことを忘れさせることを加速させたと考えられる。こうして攪土耕のロータリーが定着した。
近年、農業をとりまく環境が変化し、高品質化、おいしい農産物、安全安心の食糧生産、環境保全型農業、国際農業に対応できる低コスト化など話題を賑わしている。農業生産技術にも本物志向の変革を要求されているからには、原点に戻って耕起法から見直しをかけるべきと思える。
農業の場合も、基本原則は古今東西変わるものではない。その時代の技術にあわせてどうアレンジするかが新技術であるとすれば、化学肥料、除草剤一辺倒のロータリーによる攪土耕の時代はあまりにも長続きし過ぎたと考えてよいであろう。この辺で基本原則に忠実なプラウ耕に新しい目を注いでよい。ボトムプラウも時代の要望にこたえて改良され、深耕、反転・鋤込み耕を着実に近代化してきているのである。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
耕すということ
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