ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農業経営者ルポ

「お客様」が見える農業者

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第2回 1993年07月01日

  • この記事をPDFで読む
    • 無料会員
    • ゴールド
    • 雑誌購読
    • プラチナ
焼イモ屋のもうけは麦のために…


 もっともうけたいという欲が、本来の能力以上に畑や土を無理して働かせることにつながり、土を疲労困ぱいさせていたのではないかというのだ。

 先に紹介した焼イモの店の話だけでなく、池田さんは優れたマーケッティングセンスを持っている。彼はこの先、その面でもさらに力を発揮していくだろう。もちろん、お金がもうかることを嫌う人はいない。あるいは結果として焼イモ屋のチェーン店でも作ってしまうかもしれない。でも、池田さんは「作り続けるために焼イモ屋をする」ことはあっても「焼イモ屋でもうけるために作る」ことは多分ないだろう。

 彼は、こう解説する。

 「今は一つの畑で夏冬二作取らなければ成り立たない経営の仕組みになっちゃっている。お金にはならなくとも麦を作って野菜を作りたい。土地も自由に借りられるようになった。さらに経済的な余裕を焼イモ屋で生みだしたい」

 いま、連作や無理をした作型で土を酷使して売上を上げることのできる人の方が農家として「技術」が優れているかのように語られることが多い。しかし、

 「畑に麦を取り戻すためにこそ焼イモでもうける」

 と、言い切る池田さんこそ優れた経営者というべきであり、真の成功者たりえる人なのではないだろうか。

昆 吉則

関連記事

powered by weblio