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【耕すということ】
水田の土作り耕起法
- 農学博士 村井信仁
- 第3回 1993年10月01日
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基本に忠実なカリフォルニアの稲作
アメリカのカリフォルニア州の稲作を視察した時、大きな衝撃を受けた。気候条件に恵まれたカリフォルニアでは直播栽培が成立し、大規模、低コストの稲作が行われていた。その中で特に感心させられたのは土づくりの基本が忠実に行われていたことである。世界一高水準化されているといわれるわが国の稲作技術であるが、カリフォルニア州の稲作から見れば、それはあまりにも小手先に過ぎないのではないか、と考えさせられた。
現在、わが国では「深耕」とか、「乾土効果」などの土づくりの基本が全く無視されてしまっている。深耕は田植機の走行性を悪くするので行わない、といった安易な考え方による省力化が優先してしまっている。和犂に工夫を加え、深耕に心がけたがっての面影などはない。乾上効果を理解していても、それだけ手間をかけるメリットはないとしているのである。
日本の稲作は大切な何かを忘れていると思える。栽培する側の都合ばかりを考えて、作物の要求を満たしてはいない。これでは高位生産を期待するのは、どだい無理である。作物の立場を理解し、作物と会話して育成する気構えがなければ、とてもカリフォルニア州の稲作に並ぶことなどできまい。
深耕と田畑輪換
カリフォルニア州でなるほどと思ったのは、第一はボトムプラウによる深耕である。あの広大な面積はロータリティラの低速作業では対応できない。また燃料消費量も多いのである。しかしそれだけではなく、ロータリティラでは深耕ができず、作物の要求に応えられない、としていたのである。現在のロータリティラの原型は欧米から導入されたものであるが、その欧米ではわが国のようには使われていない。特殊な野菜作地帯などに使われているに過ぎない。その野菜作地帯とて連年ロータリティラが使われることはなく、隔年ごとにボトムプラウが入れられている。栽培する側の便宜性ばかりで耕起はしていない。深耕・反転・鋤込み耕を一貫して農業の基本としている。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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