ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

耕すということ

水田の土作り耕起法

 続いて驚いたのは、田畑輪換が行われていたことである。小麦を数年栽培すると、地力も衰え、畑地の雑草も増えてくる。そこで水稲に切り換えるという。水稲に限って連作ができるのは、水が消耗した微量要素を補填し、また土壌病害の発生を抑制することによる。これを巧みに利用しているのである。

 畑地の雑草は、水を使うことによって消滅させることができる。水田化したばかりの圃場には水田の雑草は生えにくい。驚くほど少ない除草剤の使用によって直播栽培が成立するのは、田畑輪換ならではのことである。

 水田を同じく数年栽培すると、また小麦に切り換える。水田に増えてきた雑草は畑作化によって消滅するのはもちろんのこと、畑地の雑草はすでに消滅しているので、小麦作に雑草はほとんどみられない。

 何と合理的であろうか。除草剤は近代技術であるとしても、除草剤の使用はそれだけ費用がかかるし、また作物に全く影響しないものでもない。土壌微生物などの生態系に影響すると懸念もされており、除草剤の施用は可能な限り少なくする姿勢が正しいのである。

 水田を畑地に戻すことによって、水田に形成された土壌の還元層は、速やかに元に戻り、有機物の腐植化か進展する。小麦作に悪かろうはずがない。そして、十分に熟畑化したところでまた、水稲の作付けを行う。水稲は連作の場合より根は広く張り、実に健全に生育する。ここに自然の理を生かした持続的農業が成立している。

 カリフォルニア州の水稲は気候条件に恵まれ、かつ、品種改良も進んでいることから直播栽培でも高位生産であるとみられているが、決してそればかりのことではない。むしろこの基本的な土づくりが高位生産をもたらしていると言って過言ではないであろう。カリフォルニア州を視察している多くの人はこの点を見過ごしている。土づくりをすれば、作物は伸びるべくして伸びるのである。


手抜きと合理化は違う


 このカリフォルニア州の稲作を見て、わが国の稲作は二重にも三重にもハンディキャップを背負っていることに気がついてくる。あの広大な面積の経営には、わが国の経営では及びもしないスケールメリットがある。そのスケールメリットに加えて緻密な基本技術を組み入れているのである。

 一般的には、条件に恵まれると手抜きをする、と考えられるが、カルフォルニア州の稲作に限っては逆である。スケールが大きいだけに、手抜きをすれば経営者はその反動が大きいことを知っており、基本技術に忠実なのである。

 わが国の場合、稲作転換で田畑輪換ができる条件が与えられたにもかかわらず、その気配はない。ロータリティラの浅起こし、撹上耕を繰り返し、乾土・乾田効果を図る努力をすることも見られない。除草剤を使うことで、除草は完全に省力化されたとしているのは鵠りではなかろうか。経営面積が少ないからこそ、単位面積当たりの生産性を高めるべく自然の理に従い基本技術に忠実でなければならないはずである。

関連記事

powered by weblio