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カリフォルニア州では、日本は稲作ばかりでなく、肉牛などでもとても勝てるものではないと思い知らされる。飼養頭数が多くそのスケールメリットに大きなハンディキャップを感ずるが、濃厚飼料が安く手に入る地域にありながら、それを決して贅沢に使ったりしないのである。コンプリートフィード技術が発達していて、安価な粗飼料に濃厚飼料を配合、嗜好性を高めて給与している。
肉牛経営では、生産費に占める割合の多いのは飼料費である。従ってこれを仮に一〇%節減するとしても経営者にとっては、飼養頭数が多いだけに大きな利益につながることになる。濃厚飼料が安いからといって、いい加減な使い方など決してしない。
わが国では、飼養頭数が少ないことに加え、世界一高価な配合飼料を給与しているのである。日本人の好みにあった高級肉を生産しているといっても、生産費ではとても勝負にならない。
日本人は勤勉な国民と言われているが、どうも近年にいたってはそれが当てはまらないと思える。いろんな場面で手抜きをして、それを合理化と勘違いしているようである。国土にも、資源にも恵まれていなければこそ、飽くことなく合理性を追求し、基本技術に忠実でなければならないのではなかろうか。円高で豊かな国になった、などと思い上がれば、たちまちにして奈落の底に落ちることを覚悟すべきである。
わが国は至難とされた田植機を完成させ、精緻な自脱型コンバインを開発した。その技術は高く評価されてよいであろう。また、品種改良も進み稲作の北限を伸ばした。しかし、それだけでは誇ってよいことにはならない。生産性、つまりコストでは劣るからである。ここで「力の稲作」を指向するならば、改めて土づくりについて反省してみるべきであろう。その努力がなければ、カリフォルニア州などの稲作に引き離されるばかりである。
一時、ドライブディスクプラウが注目され、全国的に普及したことがある。これは長年のロータリティラによる浅起こし、撹土耕に対する反発であったであろう。昭和四五年ごろまで上昇を続けた水稲の収量は、その後横ばいに入りさっぱり上昇する兆しがない。不安を覚えるのは当然のことである。米余りの時代にあって良質米の生産が要求され、稲作に欠けていた土づくりに強い関心を寄せた。
残念ながらドライブディスクプラウの熱は数年にして冷めてしまった。なぜだろうか。察するに、これは生産者がドライブディスクプラウに過度の期待を寄せたからに他ならない。ドライブディスクプラウに機能的な欠陥が全くなかっかわけではないが、近年の全般的な風潮の弊で、生産者は短兵急に過ぎ、土づくりが効果を発揮するには時間がかかることを忘れていたことに関係している。
ドライブディスクプラウが目指したものは、決して間違ってはいない。第一にはロータリティラより深耕ができることである。根圏域を拡大して生育に悪かろうはずがない。これは良質米多収で表彰された優良農家が、いずれも二〇cm以上の耕深であることからも納得できる。
肉牛経営では、生産費に占める割合の多いのは飼料費である。従ってこれを仮に一〇%節減するとしても経営者にとっては、飼養頭数が多いだけに大きな利益につながることになる。濃厚飼料が安いからといって、いい加減な使い方など決してしない。
わが国では、飼養頭数が少ないことに加え、世界一高価な配合飼料を給与しているのである。日本人の好みにあった高級肉を生産しているといっても、生産費ではとても勝負にならない。
日本人は勤勉な国民と言われているが、どうも近年にいたってはそれが当てはまらないと思える。いろんな場面で手抜きをして、それを合理化と勘違いしているようである。国土にも、資源にも恵まれていなければこそ、飽くことなく合理性を追求し、基本技術に忠実でなければならないのではなかろうか。円高で豊かな国になった、などと思い上がれば、たちまちにして奈落の底に落ちることを覚悟すべきである。
ドライブディスクプラウが持っていた意味
わが国は至難とされた田植機を完成させ、精緻な自脱型コンバインを開発した。その技術は高く評価されてよいであろう。また、品種改良も進み稲作の北限を伸ばした。しかし、それだけでは誇ってよいことにはならない。生産性、つまりコストでは劣るからである。ここで「力の稲作」を指向するならば、改めて土づくりについて反省してみるべきであろう。その努力がなければ、カリフォルニア州などの稲作に引き離されるばかりである。
一時、ドライブディスクプラウが注目され、全国的に普及したことがある。これは長年のロータリティラによる浅起こし、撹土耕に対する反発であったであろう。昭和四五年ごろまで上昇を続けた水稲の収量は、その後横ばいに入りさっぱり上昇する兆しがない。不安を覚えるのは当然のことである。米余りの時代にあって良質米の生産が要求され、稲作に欠けていた土づくりに強い関心を寄せた。
残念ながらドライブディスクプラウの熱は数年にして冷めてしまった。なぜだろうか。察するに、これは生産者がドライブディスクプラウに過度の期待を寄せたからに他ならない。ドライブディスクプラウに機能的な欠陥が全くなかっかわけではないが、近年の全般的な風潮の弊で、生産者は短兵急に過ぎ、土づくりが効果を発揮するには時間がかかることを忘れていたことに関係している。
ドライブディスクプラウが目指したものは、決して間違ってはいない。第一にはロータリティラより深耕ができることである。根圏域を拡大して生育に悪かろうはずがない。これは良質米多収で表彰された優良農家が、いずれも二〇cm以上の耕深であることからも納得できる。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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