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現代技術を駆使した土づくり
カリフォルニア州の稲作に勝てるべくもないが、だからといってこのまま手をこまねいてよいことにはならないであろう。土づくりが叫ばれて久しいが、具体的な成果をあげている例は少なく、相変わらずロータリティラによる浅起こし、撹上耕に終始しているのが現状である。これでは努力に欠けると言われても仕方がない。
アメリカの市場開放の要求は、この怠慢さを突いてきているようにも思える。規模の大きさに加え、農業の基本技術に忠実にしで「力の農業」を成立させていることから、弱いところを狙うのである。
これは野生の世界に似ている。ライオンが鹿の群れを襲う時には、弱い鹿に狙いを定める。決して強壮な鹿を狙いはしない。弱いから餌食になり、自然に淘汰されるのである。
かといって、わが国の稲作が淘汰されてよいことにはならない。国の政策的な保護が必要であるとしても、それだけでは支えきれないであろう。自らが強壮な体質強化に努めることが大切である。
この場面で何かポイントか。直播栽培による省力化、低コストがこれからの生きる道だと提唱する人がいるが、それは的外れである。移植栽培でも生産性は世界に劣り、とてもまともではないのに、直播栽培で勝てる訳がない。それほど気象条件、土壌条件に恵まれているところではないのである。
いずれ直播栽培の時代が来るとしても、それはずっと先のことであろう。その前にやることといえば、遅れている土づくりである。すくなくもカリフォルニア州の稲作のように、土地の潜在能力をフルに活用しようとするシステムを作るべきである。
ロータリティラが果たした役割は高く評価するとしても、そこにとどまっていてはあまりにも進歩がない。ドライブディスクプラウを使いこなす技術を身につけるべきであろうし、近年進歩の著しい水田ボトムプラウに目を向けて、より高度の技術に挑戦するのも大切なことである。それが稲作の生きる道であると言える。決して難しいことではない。
日本は、稲作では先進地であると思い上がっている問に、後発地のカリフォルニア州にすっかり遅れをとってしまっている。これでは“先発後進国”である。農業は土地を生産基盤にしているものであれば、やはり、いつの場合も基盤整備をし、そして、土づくり耕起法に現代技術を駆使するものでなければならない。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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