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特集

不作のあとに問い直す「田づくり・土づくり」

 もっといえば、この数年来、稲作は手抜きが進行してきた。連綿と行われてきた畦塗り作業さえ満足になされなくなってきた。そんな状況のもとで、長く続く低温が、体力の弱った稲作をボディーブローのように襲うのは、ある面で目に見えていたのではないか。いわば、「捨てづくり不作」である。

 移植され本田で生育を始めた稲を低温から守る手だては、語りふるされたことだが、深本管理である。稲の幼穂は、二〇度C以下の低温に遭うと死んでしまう。そして、減数分裂期に一七度C以下の低温に遭うと花粉形成は障害を受ける。だから、深く水を張って水の中に幼穂を埋没させて、日中に暖められた水の温度で幼穂を守ってやる。

 稲は寒さの夏がやってきても、動けないのである。寒さから守ってやる――。それが、土と作物の可能性を引き出す農業経営者の技術である。

 この深水管理さえ、十分に行われなかったことが、その後の被害を大きくしたといえるのではないか。個人差の一因はここにあるのだろう。

 深水管理の重要性は、いまさらいうまでもないと、読者からお叱りを受けるかもしれない。むしろ、深水管理かできなくなっている畦管理の現状を問題とすべきなのであろう。ここでは、頑丈な畦を高能率に作る畦塗機を紹介した。畦塗機を使えば、モグラやネズミ、ザリガニなどによる横穴をきれいに修復することができ、畦からの横漏れの際に問題となる田面より下層の壁面からの水漏れも完璧に防ぐことできる。

 かつてのように、人海戦術で畦塗りを行うことは不可能になってきている以上、ぜひこの畦塗機で堅牢な畦を回復してほしい。


今年こそ悔いのない「田づくり」を


 第二に指摘すべきは、そもそもどのような田をつくるかという、本質的な問題である。深水管理か、低温からの被害をいかに最小にとどめるかという「対応の技術」だとすれば、水田圃場が持つ生産力を最大限に引き出すための「田づくり」の技術であり、「積極の技術」である。

 その点では、深水管理を可能とする畦づくりも「田づくり」の努力の一つといえるだろう。

 しかし、ここで問い直したいことは「耕す」ということの再点検である。作土層付近は、わずかだが、たん水中に溶けた溶存酸素によって、好気性微生物の活動が活発になり、窒素固定を行い根に供給される。ところが、踏み固めによって透水不良となった水田では、還元層となり嫌気性微生物の活動が活発になって脱窒作用が起こり、せっかく投人された肥料分の吸収も十分に行えなくなる。そればかりか、有機酸や硫化水素などの有害物質がたまっていく。

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