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特集

コントラクター=農作業サービスビジネスの現状と可能性

 畦塗り機以外に、トラクタ経費と燃料代、そして二人の人件費が加わるのである。もちろんトラクタ経費には、畦塗り機と同じように金利負担や修理費も見越す。人件費は、時給一五〇〇円を計上する。

「スベシャリストなんだものね、ほんとは二〇〇〇円にしたいよね」

 中島さんの計算では、畦塗り機、トラクタ、そして人件費を合計して、一〇〇m八八〇〇円にはなるという。

「だから、一万円取っても利益は二一〇〇円にしかならない。粗利は一二%、安売りだよね」

 畦塗り作業がたいへんなことから、元畦に沿ってプラスチックの畦波板を取り付けて畦からの水もれを防ぐ方法も広く行われているが、その畦波は、二〇mでだいたい一一〇〇円、一〇〇mだと五五〇〇円かかる。しかも、二人がかりの作業で一枚の田んぼで約半日はかかる仕事量である。

 中島さんは、自らの人件費まで計算して経費を割り出し、採算に合う料金を設定する。自分の収益性を考えて、それを、顧客に納得してもらっているのである。

 彼のこの姿勢は、おそらく、これからのコントラクターに当然問われてくる問題である。現状では、とかく作業の委託者と面積を増やすために、採算割れを招くような低料金を設定する傾向があるのではないだろうか。採算を考慮に入れない作業料金は、コントラクター自身の営業に無理を生じさせ、新たな投資もできず、長続きしない。価格の安さを競う競争には、健全な発展もないだろう。

 ただ、収益性だけを優先させるのも、作業を委託する地域の人たちの納得は得られず、結果的に地域の農業をサポートしていく新しい担い手とはなり得ないだろう。

 委託者の納得を得る保障、それが作業の質であろう。


作業の後に何を残すか

 一〇〇mの畦塗りに、中島さんは一時間くらいはかかるという。メーカーの仕様書では、一〇〇mを一五~二〇分で処理できる能力を持っているが、作業の途中途中で畦の出来具合をトラクタから降りて確認しながら行うのだという。

「その圃場に入って、仮に仕上がりに問題があれば、お客さんは次からは頼んではくれない。そこらへんがあいまいだと、経営は成り立たないからね。いちばん大切なことは、作業をやった後、何を残すかだよね。信頼を残すか、それとも『あいつにやってもらったら、悪くなった』というんじゃ、信用を落として悔いを残す」

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