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水田、畑での心土破砕
水田で心土を破砕する場合には、斜めがけするのが正しい。それは水田に平行に施工すると、田植え作業もそれに沿った場合、車輪が軟弱施工部に当たれば沈下して正常な作業が望めなくなるからである。斜めがけであれば、軟弱になっている部分を左右の車輪が交互に差しかかるので、そこを通過するのは容易であり、田植え作業にはなんら支障はない。
施工深を五〇cmとしても、施工幅をどの程度にするか。畑作の場合は七五cm程度の間隔で全面施工するが、水田の場合は無理である。一五〇cm程度の間隔が田植え作業を考えた場合に適応していると言えるであろう。その代わり、毎年施工するのである。畑作の場合は一度施工すると四~五年は間をおくが、これと同様にはならない。今年右からの斜めがけであったとすれば、来年は左からの斜めがけをする。さらに翌年は前々年の間を狙った右からの斜めがけである。
本来やるべきこと
そこまで、手当てをしなければいけないのかと考えるに違いない。その経費が負担になると懸念する向きもあろう。しかし、理屈から言えば、一〇%生産費を多くしても、そのことによって一〇%増収すれば、十分に採算はとれるのである。心土破砕の経費は生産費を一〇%多くするほどのものでない。それよりもレンゲソウを栽培するでもなく、心土破砕すら怠っていたことを反省すべき時期ではないかと思える。
識者は省力化、省力化と言って作業時間の短縮ばかりに目を向けるが、手抜きは省略であって省力ではない。基本に忠実な新しい技術を開発するでもなく、手抜きを奨励し、生産性を低下させ、なんの利益があるであろうか。先人は連綿と水田を支えてきた。そのことによって我々の今日があるのであり、その美田を我々の世代に劣化させることは、歴史の上に大きな汚点を残すことになろう。
それでなくとも、日本は食料の自給率四五%の国である。しかも、農地は年々住宅や工業団地に浸食されて面積は少なくなっているのである。いまや単位面積当たりの収量を増大させるより生きる道はないのである。農民魂が今に残っているならば心土破砕くらいの作業は自助努力で行われるべきであり、国は抜本的な土地改良にもっと力を入れてよいはずである。
畑作における中耕の意義
北海道で栽培されているテンサイは、寒冷地向きの作物として基幹作物となっている。ところが、このテンサイは寒さに強くとも湿りには弱い。平成五年度の冷湿害は畑作にも及んで、湿性型火山性上地帯のテンサイは被害が大きく、これまでに例がないほどであると報告された。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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