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【自分の畑は自分で診断する】
これなら分かる「土と肥料」の実践講座-土の働き土はどうやって肥料を吸着するのか
- 農業コンサルタント 関祐二
- 第5回 1994年03月01日
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錬金術に学ぶ二つの姿勢
ヨーロッパでは一五世紀ごろまで、「錬金術」というものが盛んだった。鉛やスズのような金属を、何とか“純金”に変えようとするのが錬金術である。いまから考えれば、荒唐無稽な無謀な試みである。
金にあらずの物質に、まことしやかに薬品を加えてみたり、熱や圧力をかけたりして、何とか金を作り出そうと、“一獲千金”をねらったのである。当時、「錬金術師」といわれた人びとは、その目的のために危険な実験もちゅうちょしなかった。そのために事故も起こり、けがややけどはめずらしくなかったようだ。
結果としては、もちろん、鉛やスズが金に変わったわけではなかった。投入された多くの労力や犠牲は無駄だったように、現代人には思える。そして、人間の欲望というもののすごさにも驚かされる。
しかし、この錬金術という試行錯誤は決して、歴史のあだ花ではなかった。後の世に花開く「近代化学」のたいへん重要な基礎をつくってくれたのである。この多くの犠牲によって培われた近代化学は、今日私たちのさまざまな分野で貢献してきたのである。
その意味では、かつての錬金術師たちは、まさに鉛を金に変えたと言えるだろう。
中世ヨーロッパの錬金術の歴史的教訓の第一は、周りの人びとに、たとえ夢、幻といわれようと、目標ある試みに挑戦し続けると、その過程の中でさまざまな改良や発明がうまれるということである。現在の農業者に、彼ら錬金術師たちのような、確固たる「到達目標」を持って経営を続けている人が、果たしてどれくらいいるだろうか?
目標を持つ。それは、農業経営にとってもたいへん大事なことである。とくに作柄の安定と向上をめざすうえで、土壌改良についての「改良目標値」を持つことは、そのキーポイントである。
練金術から第二に学ぶべきことは、先人の教訓を自分なりに加工改良するという姿勢である。彼らに劣らぬ姿勢を、私たち農業者は持っているだろうか?
作物が生育する圃場は、農業者にとっては、数多くの教材に恵まれた、いわば“大学”である。例えば、同じように管理しているのに、作物の生育は決して一様ではない。上性や周りの環境によって、作物は同じ圃場であっても、違った生育を見せる。その違いから、私たちは次の栽培の改良点や工夫すべきものが何なのかを洞察することができるのだが、果たして、そうした姿勢を持っているだろうか。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
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