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自分の畑は自分で診断する

これなら分かる「土と肥料」の実践講座-土の働き土はどうやって肥料を吸着するのか

粘土鉱物と腐植で CECは決まる


 この保肥力が、土のコロイド、すなわち粘土鉱物と腐植によって生じていることを先ほど見てきた。したがって、上がどんな粘土鉱物をどの程度含んでいるか、そして腐植についても、どんな形態のものをどの程度含んでいるかによって、CECの数値、つまり土の胃袋の大きさが決まってくるのである。

 例えば、砂地では粘土鉱物も腐植も少ないため、CECはニ~六くらいしかない(表1参照)。したがって、施肥には注意が必要で、一度に多くの肥料を施すと濃度障害を起こしたり、流亡を起こすのである。また、砂地のハウス栽培では、施設内の地温が高く、かん水によって乾燥と湿潤を繰り返す環境にあることから、腐植の分解が早く、その保肥力を維持するのが難しい。

 さらに砂地では、pHが適正であっても、石灰や苦土、それに微量要素のホウ素などが円滑に供給されないために、作物に欠乏症が出ることが多い。したがって、水溶性の石灰や苦土肥料、ホウ素入りの肥料を使うなどの工夫が必要であり、これらの葉面散布も効果的である。


化学性の分析値はすべてではない


 このように、砂地土壌の化学性は欠点が多く、肥沃土という尺度では、たいへん劣悪である。にもかかわらず、全国の砂地帯には、古くから優良な野菜や花きの産地が多数存在している。それは、なぜなのだろうか? そのわけは、砂の持つ物理性の素晴らしさが、化学性の欠点をカバーしていると思われる。化学性がすべてではないのである。そこが、土のおもしろいところでもある。

 さらに、このことは、実際に作物を栽培する農業者にとっては、もう一つの大事なことを教えてくれている。つまり、「実際の土の生産力」と「土の良否を示す化学分析値」のあいだには大きなギャップもありうるということである。普及員や農協などが示す数値データは、万能ではない。あくまでも、土の化学性を示すものでしかないのである。

 しかも、化学分析データには、もう一つの問題もひそんでいる。このことも、よく理解してほしい。その実際の問題点を、測定方法から洞察してみよう。

 ここでもCEC=保肥力を例に取る。 CECの測定は、まず採取した土を図8のように容器につめ、ある薬品を注ぐ。つまり、土を薬品に反応させることによって測定するのである。いわば、容器の中で、土は強制的に反応しており、その上が持つCECの最大値を示す。

 ところが、実際の圃場では、土壌水分にばらつきがあったり、物理性にばらつきがあったりして、最大値のCECを示すことはまずないのである。つまり、土の持つ化学的機能=化学性をどの程度まで発揮させることができるかは、その土の持つ物理性が決め手となるわけである。

 化学性の分析値だけでは、土の調査にはならないのである。分析値が、全項目で適正域なのに、作物がうまくできないと首をかしげ、化学分析が役に立だないと決めつけてしまった人も多いだろう。あるいは、化学性では不良土と判定されても、作土の深さや排水に気をつけることによって、高い生産力を上げているところもたくさんあるのだ。

 だからこそ、「土を調べる第一歩は、土壌断面調査だ!」と、声を大にして言いたいのである。断面調査は、穴を掘ることによって、耕盤層の存在や硬肖だけでなく、その色や湿り具合などによって、その圃場の状態(症状)がよく分かるのである。土壌断面は、圃場の健康度を示すバロメータなのである。

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