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【江刺の稲】
「僕の世迷い言ですが・・・」
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第5回 1994年03月01日
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乱心状態に陥ったかと思うほど二転三転する食糧庁の行政指導は、かえって消費者の不安を煽りたてることとなり、三月中旬に至っても、飽食の中での「米よこせ行列」のヒステリーが続いている。 この間、読者においても、はっきり商売と割り切れるならともかく、いつにない都会の知人や親戚からの電話に、ほろ苦い思いをさせられたのではないかと思う。お百姓でもお米屋でもない僕にまで、電話が舞い込んできた。その多くは、自分にというより「農業に関係しているのだから米を紹介してくれ」と人から頼まれて苦慮されている方だった。
そして三月二日の夜、札幌に住む弟から「米が買えないんだけど……」と電話が入った。「外米でもパンでも蕎麦でも食べてろヨ!」と答えたら、外国米も買えないという。
このところあまりばかばかしくて、まじめにテレビのニュースや新聞を見る気がしなくなってしまっている自分を反省しつつ、翌日、事務所のある高田馬場周辺の米販売事情をあらためて観察してみたら、確かに、スーパーには開店前から行列ができ、開店されても商品棚には米がない。そして。米屋は店を閉めていた。
ここに至って、いよいよ我が農政と、あの戦時体制下だか全体主義国家のそれを思わせる食糧庁官僚や党派を問わぬ嘘つき政治家たちに対して、文字通り「お前ら一体何なのだ」と叫びたくなった。そして同時に、彼らだけでなく、農業の周辺でその利権のおこぼれに預ってきた僕自身を含むすべての農業関係者に対して。もちろん農家へもだ。
そして三月二日の夜、札幌に住む弟から「米が買えないんだけど……」と電話が入った。「外米でもパンでも蕎麦でも食べてろヨ!」と答えたら、外国米も買えないという。
このところあまりばかばかしくて、まじめにテレビのニュースや新聞を見る気がしなくなってしまっている自分を反省しつつ、翌日、事務所のある高田馬場周辺の米販売事情をあらためて観察してみたら、確かに、スーパーには開店前から行列ができ、開店されても商品棚には米がない。そして。米屋は店を閉めていた。
ここに至って、いよいよ我が農政と、あの戦時体制下だか全体主義国家のそれを思わせる食糧庁官僚や党派を問わぬ嘘つき政治家たちに対して、文字通り「お前ら一体何なのだ」と叫びたくなった。そして同時に、彼らだけでなく、農業の周辺でその利権のおこぼれに預ってきた僕自身を含むすべての農業関係者に対して。もちろん農家へもだ。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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