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有機物分解のワン・ツー・スリー三段階
さあ、それでは、いよいよ有機物がどのように分解されていくのかを、見ていきましょう。
有機物の分解には、大きく分けて三つの段階があります。
満員電車のスカシッ庇状態
初期(第一段階)
土の中に投入された有機物は、まず最初に比較的分解しやすいデンプンやアミノ酸などが、土壌中の水の中に溶け出します。すると、それらを求めて糸状菌や細菌の仲間たちが、ドドーッと集まってきます。
このとき、なかには横着なものもたくさんいて、どさくさにまぎれてガスや毒素を出す奴もたくさんいます。まさに、満員電車のスカシッ庇状態です。だから、この段階は、作物にとってはけっこう厄介な時期でもあります。
セルロースの鎖をちぎる
中期(第二段階)
この状態が落ち着いてくると、今度はセルロースの分解が始まります。第二段階です。
植物は、ほとんどがセルロースでできています。そのセルロースは、ブドウ糖が鎖のように連なったもので、その鎖をちぎってバラバラにしないと、微生物は食べることができません。そのため、鎖を切ることのできる酵素を持った微生物が重要な役割を果たします。
鉄骨のように硬いリグニンを分解
末期(三段階)
そして最後に登場するのが、リグニンを分解する微生物です。リグニンは木などに多く含まれ、セルロースに比べると鎖どころか鉄骨のように硬く、普通の微生物が持っている酵素では、歯が立ちません。
そこで、おもにキノコの仲間がこれらの分解を行います。朽ちた木にキノコがよく生えるのは、キノコがリグニンを大好きだからです。
物質循環のみなもと
このように、微生物はお互いに力を合わせて、有機物を分解しているのです。しかし、それはあくまで自分たちが生きていくために必要だからであり、人や作物のために協力しているのではありません。
とはいっても、かれら微生物がいなければ、有機物は分解されず、ゴミや残さがたまり続けて、地球は“ゴミの惑星”になってしまいます。さらに、かれらの働きは、植物を支え、動物を助け、まさに物質循環のみなもととなっていのです。自己のための生産活動が周囲の生き物のいのちを助ける、というのが生態系の基本です。私たちも、見習うことが多いのではないでしょうか。
なんて、かれらのことを少しほめ過ぎましたかね。それでは、今回はこのへんで、おあとがよろしいようで――。
次回は「微生物と作物の根の関係」についてご紹介します。お楽しみに。
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微生物地位向上委員会
土と農業経営のための微生物大百科
高密度に培養された微生物資材を利用する技術が、いま注目を集めている。微生物資材の農業利用は、従来の我われの常識を書き換える可能性すら持っている。その適切な利用技術のあり方が、考えられてしかるべきだろう。この連載は、微生物資材の専門メーカーである(株)アラヤ(石川県小松市平面町へ115 TEL.0761・24・5000)の研究開発・営業担当の社員グループが執筆するものである。(編集部)
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