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ピーマン 面積の急増は起こらず暴落の危険はない
【概況】
冬場に少なく、春先五月のピークに向けて一気に増えてくるというパターンは、昨年も例年並みであった。ただし単価は例年より二~三割も安い状態が続いた。ところが六月以降、八月に向けて入荷が急減したのに伴い、単価は急騰して冬の不足時にも匹敵するような高値となる。九月にはやや入荷も増えるがまた年末に向かって減り出して、単価は高値のまま推移した。
【背景】
ピーマンなどの果菜類は、日照に敏感な品目で、低温であっても日照さえあれば肥大が促進する。年の前半はほぼ順調な天候に恵まれたことから入荷は潤沢であった。が、例年でも梅雨の時期には日照不足で肥大が遅れるため入荷減になるものだが、昨年はそれに長雨などによる近年にない深刻な日照不足が続き、八月には例年の二・五割もの入荷減となった。秋以降も入荷は例年を下回る推移となったため、高値が続き一二月には暮れの需要期に品薄となり高騰した。
この品目は、業務用ももちろんだが一般家庭消費が根強い品目でもある。一般に“ピーマン嫌い”は多いが、栄養価を考えて食卓にはよく上る品目である。品薄で高騰しても需要がついてきている、といっていい。
【今年の対応】
状況からすると、昨年のような日照不足がない限り、ことしも不足なく入荷する見通しである。しかし施設栽培が中心である果菜類のなかでもピーマンは、他のナス、トマト、キュウリのように、品目間で生産が簡単に移行できる品目ではない。そのため、昨年の高値に敏感に対応して、面積拡大が急激に起こる可能性は低い。大型のベル型のピーマンについては、昨年の秋以降の高値で今年は出荷が増えてくることが予想できるが、まだ大型種は業務用主体だけに、需要に柔軟性がない。その点、通常のピーマンについては、安ければ安いなりに需要の底支えがあるため、夏場に若干の入荷増大があっても暴落することはないと思われる。
ただし、産地包装が主流になっているピーマンも、年間を通じて一〇〇グラム袋入りのみ、というのは、小売店にとって決して売りやすいロットではない。
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小林 彰一 コバヤシショウイチ
(株)農経企画情報センター
代表取締役
青果物など農産物流通専門のジャーナリスト。(株)農経企画情報センター代表取締役。「農経マーケティング・システムズ」を主宰、オピニオン情報紙『新感性』を発行。著書に、『ドキュメント青果物市場』、『日本を襲う外国青果物』、『レポート青果物の市場外流通』、『野菜のおいしさランキング』などがあるほか、生産、流通関係紙誌での執筆多数。
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