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自分の経営を客観的に診断する

財務的には安定、多角化のための人材確保を
有限会社A(北信越・稲作ほか一五ha)の場合

今回、経営診断の対象として取材した有限会社A(以下A社)は、北信越地方にある農業法人です。稲作を中心に約一五haを経営しており、転作で大豆、カボチャ、トウモロコシを栽培しています。法人の従事者は、社長と社長の両親の三人が中心となっており、二世代家族経営が法人化した、いわゆる一戸法人です。設立は昭和五〇年代の後半で、有限会社形態の稲作の農業法人としては、この地域では先駆者的な存在といっていいかもしれません。
 今回、経営診断の対象として取材した有限会社A(以下A社)は、北信越地方にある農業法人です。稲作を中心に約一五haを経営しており、転作で大豆、カボチャ、トウモロコシを栽培しています。法人の従事者は、社長と社長の両親の三人が中心となっており、二世代家族経営が法人化した、いわゆる一戸法人です。設立は昭和五〇年代の後半で、有限会社形態の稲作の農業法人としては、この地域では先駆者的な存在といっていいかもしれません。

 A社の売上高は、平成五年度(平成五年一月一日~一二月三一日)で、約三千万円。前回掲載した「税務上の法人化のメリット」のある売上の規模を下回っています。A社の場合、法人化の動機は、税務上などの実利面でのメリットではなく、家計と経営の分離や経理の明確化に伴う経営者意識の転換にあったようです。


頴回貸借対照表分析


 それでは財務内容について分析してみましょう。次の表は、A社の平成五年度の貸借対照表です。

 貸借対照表とは、企業の財政状態を表したもので、財務諸表とよばれるものの中でも損益計算書とならんで重要なものです。この貸借対照表は、資金の調達源泉とその運用形態を表現しています。

 A社の例で言えば、まず運転資金は短期借入金などから調達しています。短期借入金や未払金などは科目分類上、流動負債に属しますが、これは短期(一年以内)に支払い期限の到来する負債、すなわち借金ということです。これに対して流動資産は短期に現金化される資産ということになります。こうしてみると当面支払わなければならない借金である流動負債の四、八四六千円に対して流動資産が五、六二三千円あるので、一般論としては財務的にほぼ安全な水準にあると言えます。これを次式のように数値化したものが流動比率といい、A社の場合、一一六%となっています。この数値の目標は一三〇%です。

流動比率(%)=流動負債分の流動資産×100

 さて、流動資産といっても、普通預金などのいわゆる当座資産はすぐに現金化されて支払手段となりますが、生産資材や農産物などの棚卸資産は、生産が終了して販売されるまで現金とはなりません。そこで、流動負債の当座資産に対する割合が、支払能力を表す数値として重要な意味をもちます。これを当座比率といいます。

当座比率(%)=流動負債分の当座資産×100

 A社の場合当座比率は九〇%となっており、基準となる一〇〇%を下回っています。A社の場合、稲作経営が中心ですから、収穫の秋に向けて資金が不足するため、短期借入金などでこれを調達しています。一方、生産されて棚卸資産となったお米は、販売されるのに伴って現金化されて普通預金として回収されます。

 実は、この短期借入金は、A社の構成員からのものであり、未払金も構成員に対する労賃の分ですので、経営を家族単位で考えれば資金は回っているのです。しかし、法人を独立した存在と考えれば、この分だけ収穫期に資金が不足しているわけです。

 稲作のように収穫が一年に一回の農産物については、農産物に対して投下した資金は一年間固定化されるため、その資金はできるだけ自己資本によってまかなわれるのが理想的です。したがって、自己資本の充実によってこの資金不足を解消することが望まれます。自己資本の充実には、利益の留保と増資とが考えられますが、資本金一千万円までは、法人住民税の均等割の金額や交際費の損金算入限度額など、税務上の取り扱いが変わりませんので、増資による方法も十分検討に値するでしょう。

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