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自分の経営を客観的に診断する

財務的には安定、多角化のための人材確保を
有限会社A(北信越・稲作ほか一五ha)の場合

 固定資産については有形固定資産の取得価額が合計で六、四三六千円。これから減価償却累計額の三、六三七千円を差し引くと二、七九九千円です。これに農協などへの出資金の二五〇千円を加えた固定資産の価額の合計額は三、〇四九千円となります。

 固定資産については、長期に資金が固定化するため、流動負債によって対応していたのでは、資金の返済のたびに新たな借入れが必要となり、資金繰りに追われることになります。そこで、固定資産に対する資金の調達は自己資本または長期借入金によってまかなわれるのが望ましいとされています。

 A社の場合、固定資産の三、〇四九千円に対して資本金が三、〇〇〇千円、未処分利益が八二六千円で自己資本の合計は三、八二六千円となっており、固定資産の投下資本については自己資本によって対応しています。

 さて、A社の場合、経営規模のわりに固定資産が少ないことに気がついたでしょうか。

 A社では、自己所有の農機具は、トラクタと軽トラックのみで、田植機やコンバインは社長個人が無利子の農業改良資金によって取得し、これを減価償却費相当額の賃料でA社に対して賃貸しています。また、育苗や乾燥調製については集落を単位とした任意組合に委託していますが、これらの任意組合の作業の一部を他の農家の委託分も含めてA社が受託しています。


損益計算書分析


 次に、損益計算書についてみてみましよう。売上高が三〇、三三五千円に対して、売上総利益が、一二、二五七千円。販売費及び一般管理費を控除した後の営業利益は八千円となっています。転作助成金などの営業外収益及び支払利息などの営業外費用を加減した後の経常利益は二七〇千円です。

 一戸法人であるため、役員報酬や賃金の形で収益を分配して利益を少なくすることは、節税の観点からは望ましいのですが、自己資本の充実の観点からは利益の留保も必要です。

 この五年間の売上高の推移を見ても、病害のあった影響もあり、変動があります。内部留保が少ないため、赤字となった年には繰越欠損を抱えることになり、この状態が二年間継続しました。A社は金融機関からの借入れはありませんが、一般的には累積赤字を抱えていると借入れは難しくなりますので、継続して利益を出せる経営体質に転換することが必要です。

 損益を部門別にみてみますと、コメの直販を含めた稲作部門と作業受託部門で収益をあげている一方、転作作物の大豆、カボチャ、トウモロコシは軒並赤字となっています。大豆については、転作目標面積の消化のための稲作不適地における捨て作り的なもので、やむを得ない面もあります。農業の場合、転作が不採算部門だからといって切り捨てるわけにいかないわけですが、一般的には、経営の改善といえば不採算部門の見直しから始めるのが定石です。その点で、後に述べる事業の多角化とのからみもあり、転作の見直し・活用がA社の経営の課題の一つと言えるでしょう。

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