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【イベントレポート】
本邦初の試み?!土を知り土管理のあり方を学ぶ実践大学
- 編集部
- 1994年06月01日
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「土の科学」を身につける
五月二六、二七日の二日間にわたって、千葉市の雪印種苗(株)千葉研究農場を会場にして、本誌主催による「第1回・農業経営者のための実践土壌肥料学セミナー」が開かれ、関東近県を中心に、遠くは岩手県や長野県などから五三人の人たちが参加した。
セミナー講師は、創刊号から「自分の畑は自分で診断する」を本誌に執筆している関祐二氏である。関氏は、現在もチャと稲を栽培する農業経営者である。同時に、白身の営農体験をとおして、現場の実際場面では、土に対する正しい認識が少ないことから、土壌学の知識とかけ離れた技術指導さえ平気で行われていることに驚きと憤りを覚え、八年ほど前から周りの仲間たちと土壌・肥料・施肥に関する研究会を開いてきた人。現在は、その蓄積をもとに、農業技術コンサルタントとしての活動が増えてきている。
このセミナーは、農業経営者が「土の科学」を自分自身のものとして身につけ、肥培管理の普及指導などをうのみにした状態から脱却し、畑や生育の実際に合わせた適切な土壌管理、施肥の手立てを処方できる能力を身につけることを、最大のねらいとしたもの。
もちろん、講義には限界がある。あくまでも「土の科学」を身につける努力のきっかけとしてもらうことを期待したのである。その点では、営農体験をもとに語る関氏は、このセミナーにもっともふさわしい講師といえるだろう。
知識を知恵へと高める「なぜ?」
泊まり込み二日に及ぶセミナーは、「土の組成」から始まった。土の組成というと、ある程度勉強した人は、「土が固相と液相、気相の三相から成り、固相を構成するのは、造岩鉱物、粘土鉱物、腐食、生物である」と正確に答えることができるだろう。ところが、この知識が実際の畑の耕作と土の管理にどのように役立っているかというと、疑問だ。単なる知識のレペルにとどまっていることが多いのではないだろうか。
せっかくの知識を、農業経営者自身の土壌管理の技術向上のために役立たせ、経営として食うための「生きた知識」にまで高めるためには、これらの間の相互関係を正確に把握することが不可欠だ。
「三相といっても、土を管理するということからすると、土に固有なものに着目して、その正体を見ていかなければならない。液相と気相は、土の乾燥状態によって、いかようにも変化するものだから、この二つは、いわば“アパートの住人”である」
と、巧みなたとえを使って、アパートの“大家さん”である固相の主人公(造岩鉱物、粘土鉱物、腐食、生物)の位置が受講者にはっきりしてくる。そして、この「四つの登場人物が、液相という連続した系をとおして土のはたらきをもたらしている」という話に、固相と液相、気相の関係を理解していくようになる。
土の組成を学ぶことが、ダイレクトに土の正体を知ることへと連動していくのである。ここに、知識を能動的、実践的に生かすという、関氏とこのセミナーの積極的な姿勢が現れていたようだ。
受講者は、次第に話に引き込まれていった。講義の内容は、冒頭から大学の農学部や農業高校で学ぶ土壌学そのもの。講義のレベルは大学級である。いやテーマが「土の中の水」土壌溶液と、その容水量の変化を、重力水、毛管水、結合水というとらえ方で表現し、「土壌中の水分変化を数値化し、しかもそれをリアルタイムに(同時に)把握して、それに合わせて水分管理を行う。そのためにPFメーターを使って、適切なかん水を行っていくことが可能となる」という話になったときは、大学院クラスだったといえるかもしれない。
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