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新・農業経営者ルポ

人々の支えがあって実現した新規就農、でも・・・・・・

 敏夫はこれまでに地域の農家であればこそ裏切られたり、脅されたり、嫌な噂を流されたこともある。でも、それ以上に、地域の人々に助けられてこそ農家になれた。

敏夫は除草剤を使わない。また、耕作放棄地となった農地を借りることが多いために草に苦しめられ、事実、敏夫らの農地には草も多い。でも、そんな事情を察して、となりの農家に事情を説明し、自ら境界地の草刈りをしてくれる地主もいる。 彼らは高齢化で農業ができなくなる。であればこそ、自分がその手助けをしなければならないのだと考えているのだ。


新規就農者だからできること

 昨年の年商は約1千万円。でも、今年は2千万円を越しそうだ。彼らは、今年の1日における目標売上を8万5千円と決めた。それで年間を通せれば年間で3千万円になる。これまではその目標を実現しているが、夏場には売上が下がり、今期中に3千万円を実現するのは無理だ。

 その日商を実現するために営業に出る美穂子が情報を集め、彼女の責任で商品と出荷の場を確保するようにと指示している。

現在、彼らは冬場のハウスでミズナやナス、ピーマン、ニガウリなど、路地ではジャガイモ、ニンジン、タマネギ、ナスなどを特別栽培レベルで生産し、生協に出荷している。オリジナルな商品開発にも取り組む。たとえば、のらぼう菜という埼玉の品種を自家採取して9月に播いて菜っ葉として「カキナ」と呼んで売っている。 経験のない作物の商品開発に関しては、美穂子が実験栽培をし、直売所で試し売りをする。それを開発した商品を美穂子がさらに営業する。

 新規就農者という開拓者であればこそ、将来の地域農業の姿を考え、次に続く者への準備も考える。受け継ぐだけの者の多くが、そこにある農地や農業の意味も問わず、その価値も気付かないのに。

 敏夫たちの農業は、その技術も経営もまだまだ未熟であるかもしれない。でも、新規就農者であればこそのこれまでの農業、農村にこだわらない新しく広く視野を持ち、遠くを見つめることができる。今彼らが困難だと思っていることも、やがて彼らにとって容易なことになる。

 やり続けることで未来が築かれていくのだ。耕し続ける勇気を持ち続けることだ。だからここに至るまでにこの10年が必要だったのだ。だが、彼らにはさらに豊かで意味ある未来が待っているはずだ。

(本文中敬称略)

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