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情報不足で立ち往生してしまう恐れもあるか。
「官僚は知恵者が多く、道に迷った旅人に、親切ごかしに地図を渡し、地獄に導くようなことをやりかねない。その策略に民主党大臣が引っかからないようにするには、外部から情報を提供してやるしかない。情報公開があっても、それは都合のよい情報を公開するという意味にすぎず、都合の悪い情報は絶対に表へ出してこない。官僚の情報の独占・私物化を打破しない限り、霞ヶ関改革は永遠に不可能だ」
農水省と民主党はどうか。
「長年、自民党と一心同体でやってきたから、民主党とのパイプは少ないと思うよ。民主党とパイプがありそうな役人は、そもそも傍流的存在で窓際にへばりついているか、窓の外に飛ばされているか、そのいずれかだ。それは冗談としても、もう政治家をお客さん扱いはできないね。それと上から目線もダメだな。官僚は、腹の中では政治家を小馬鹿にしてきた。あしらわれてきた政治家にも問題はあるが。それはそれとしても、政策は自分たちがやりますから、大臣は予算を取ってきてくださいな、そんなことはもう通用しないと思うよ。政治家とは直球で勝負するしかない」
大臣の質によって省庁の運命も決まるか。
「あり得るね。民主党政権は、霞が関解体を公約しているだけに、最初はそこそこの人材を送り込んでくるはずだ。当面は、来年の参議院選に単独過半数を目指すことに全力を挙げる。本格的な霞が関改革は、それ以降ということになる。それまでは、まず様子見作戦を展開するのでは」
ところで肝心の農業政策は。
「民主党マニフェストで農業政策は目玉の一つで、特に農業者戸別所得補償は農水官僚と意見を異にしてきた。民主党政権になるとは思っていなかったから、つい最近まで農水官僚はこの政策を随分と小馬鹿にしていたが、それをやらせられるのだから、頭が痛いだろうね。しかも財源問題がつきまとう。農林水産で総額1兆5000億円という規模だ」
財源捻出は可能ですか。
「農業分野には1兆円の所得補償を約束している。マニフェスト作りに携わった平野達男参院議員は、現行の品目横断経営安定対策関連の予算約3600億円、また農林水産予算2兆7千億の1割程度を節約して財源に回し、残りの3千億円から4千億円は、国全体の予算の見直しの中で財源を生み出すと、国会で答弁している」
農業土木も予算削減の対象だね。
「随分と切り込みがあるだろう。これでも足りない分は、施設や機械につける補助金に大なたを振るうのかな。官僚によるふざけた補助金の使い方もあって、それを大臣が見抜くことができるかどうか、政治家の力量が問われるのは、ここだな」
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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