ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス

知ることと追い続けること

知識に加えて、「何のためにこの会社を作ったのか」「この会社はどのような社会的意義を持つのか」といった授業もする。使命の継承のためだ。本誌主催の「A-1グランプリ」を当社の事業モデルがなぜ受賞できたのか、自分なりの解釈を加えて解説する講義もした。

 人間が肉体と精神によって存在するように、事業もまた、進むべき正しい道を探るための「知」と使命としての「魂」によって成り立っている。


知の大切さ

 私が「知」の大切さに気づいたのは就農して2年目のことだった。農業の素人だった私は、チッソ、リン酸、カリのそれぞれの役割もろくに知らないまま、当時栽培していた芝に肥料を撒いていた。芝は30cm角のシート状にして、納品する。収穫の季節になり、芝をはいでパレットに乗せようとしたが、根張りが悪くちぎれてしまい、シート状にならない。原因は肥料のやりすぎにあった。おかげで収穫手間が倍増した。100箇所近くに散らばった圃場に移動するたびに、「窒素の撒きすぎだ」と父母や従業員の皆から指摘を受けた。100度も同じことをいわれ続けた私は身に染みて、「知」の必要性を学んだ。1日の作業が終わると、肥料関係の本を読むのが日課になった。解決の為に必死に学んだ。

 だが、いくら本を読んでも、実践的にどうすればいいのか、なかなか飲み込めない。そのとき、助けになったのが「チッソ」という会社だ。「チッソを社名に用いるぐらいだから窒素について精通しているだろう」と考え、連絡を取ってみた。すると博識な社員が自宅まで足を運んでくれ、彼から窒素の役割、栽培のイロハなど、現場で使える知識をあれこれ教わることができた。

 倍加した芝はぎの手間に例えられるように、教育に力を入れるのには、切実な必要性もある。先輩社員である中堅、熟練スタッフは自分が理解できていることを前提に説明するため、新人スタッフは理解不足のまま作業を行なうことになる。彼らに悪気はないが、未経験である。基礎知識もなく、なぜその作業が必要なのか、目的も分からない。下手に触らせては数千万円もする機械を壊されかねないのだ。基礎や目的の部分にしっかりと時間をかければ、実践での迷いはなくなり、結果的に成長も早い。

 創業者が考えたアイディアや企画力にポテンシャルがあれば、その力で事業はある段階まで成長する。その後、どこかで止まってしまうのは、事業に磨きをかけるのを怠るからだ。

「知」を学び続ける姿勢を堅持し、「魂」としての組織の存在意義を追求し続ける。そうすることで事業は進化し、継続していくことができる。

関連記事

powered by weblio