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農水捏造 食料自給率向上の罠

民主党の「自給率60%トンデモ試算」と自民党の「子供だまし自給率キャンペーン」(民主党「戸別所得補償制度」徹底分析2)

■計算式2
菜種(3ha)所得補償額60万円/ha×3ha=180万円
麦(転作1・5ha)同45万円×1・5ha=67・5万円コメ(1・5ha)同35万円×1・5ha=52・5万円合計 300万円(ha当たり100万円)

 EUの6万円の実に16倍の支払い額である。日本の農家の労働価値は、EUの農家の16倍あるということか。

 10aの稲作にかかる労働時間は、平均28時間(農水省の米生産費調査2007)。3haで840時間。残業代なしで毎日10時間働いているサラリーマンの3~4カ月分の仕事量だ。農業外の勤労者に農家へのこの300万円の支払いをどう説明できるのか。

 民主党の掲げる所得補償制度は、農家を自給率に準ずる労働者とみなし、競争や向上心を無用なものとする。そして、その対価としての賃金をあてがうものだ。断じてEUと同質の制度ではない。


消費者にかかる高関税と戸別補償の二重負担

 民主党のうまいのは、「食料安全保障と所得補償」を政策パッケージにしたことだ。「所得補償をしなければ自給率が下がる、下がれば食料安全保障が下がる、そうなれば万が一のときに国民は餓える、それがいやなら所得補償に賛成しろ」という論理構成だ。

 本来、国民のうち農家だけに所得補償をする前提は、WTO、FTAを通して関税の低減・撤廃を実現し、農産物、食品価格の消費者負担を減らす目的だった。「あらゆる分野で自由化を推進する」(民主党「政権政策の基本方針」/06年12月)のとおりだ。それがあってはじめて、国際価格と生産コストの差額を負担するというトンデモ政策がいくばくか正当化できる。国産に法外なアドバンテージを与え国際価格と同じになるよう操作したとしても、品質差でどちらを買うか、ユーザーに最終選択をゆだねられるからだ。少なくとも競争原理が働くインセンティブが残る。

 それが選挙前になって、FTA「締結」のマニフェストが農業団体から批判を受け、あわてて修正する。「日本の農林漁業・農山村を犠牲にする協定締結はありえない」と釈明した。消費者負担(高関税)を続けながら、納税負担(戸別補償)を増やすという政策転換だ。締結しないでおいて、バーチャルな国際価格を想定し、その差額を補てんする。明らかな国民への裏切りだが、“うまい”といったのは先の国民恫喝パッケージにより、自由化を先延ばしにする言い訳ができるからである。

 自由化は自明の理であり、必然である。世界は互恵貿易以外に成り立たない。いまさら慌てふためく理由はない。そこでなぜ食料安全保障という、もっともらしい悪知恵がでてくるのか。

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