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視点

組織を変える人材の育成を目指して

佐賀大学大学院では、来年4月から農学研究科を再編する。それに伴い、この10月から農業技術経営管理学(農業版MOT)コースを開設した。米国では農業に関する研究と教育、普及が一体のカレッジは少なくないが、日本の大学院では初めての試みになる。
 佐賀大学大学院では、来年4月から農学研究科を再編する。それに伴い、この10月から農業技術経営管理学(農業版MOT)コースを開設した。米国では農業に関する研究と教育、普及が一体のカレッジは少なくないが、日本の大学院では初めての試みになる。

 大学院における研究と教育は、専門知識の習得に重きを置き、主に研究者を育てる場として機能してきた。農業経営学においても同様である。しかし農業従事者が減り続け、国内外でも食糧問題が叫ばれるなど農業への関心が高まっている。その現実に対して農学教育は「どのような影響を与えられるか」という実践性が今まで以上に問われている。

 また佐賀県は二毛作が盛んな水田農業地帯であり、農業は基幹産業でもある。そこで同コースでは、高度な農業技術の習得をベースにしながら、農業経営のプロを育成し、現場で主体的に知識を活かせるような環境作りを目指す。


現実に即した経営管理を

 授業では経済学、経営分析、知的財産法、会計管理、さらにITによる生産効率化やマーケティング科目を充実させていく予定だ。同時にケーススタディを援用した実習として、地域の農業組織への経営参加や企業でのインターンシップを修了単位に設け、現実に即した経営管理を学んでもらう。農業経営者が単独で教鞭を取ることは規則上難しいが、担当教員と共同の授業を取り入れて、有機的なカリキュラムにしていきたい。

 MOTコースは特別の課程として、大学院生以外の農業経営者や社会人が受講することも可能だ。所定の履習時間を学習すれば、当大学が発行する農業技術経営管理士の履習証明を授与する。コース開設の発表後、県内外から相当数の問い合わせがあり、関心の高さを感じた。


1人でも多くの人材を輩出

 コースを修了した学生には、起業したり、企業に就職しながら新たに農業部門を立ち上げる人材になることを期待している。また、集落農業組織をマネージメントできる人材も育成したいと考えている。近年、佐賀県でも多くの集落営農が立ち上がったが、その全てがすぐ法人化に向かうような状況ではない。内部から組織を改革・改善するリーダーの存在は必須だ。そこで組織に活力を与え、発展のデザインを描ける人材を育成できればと思う。

 コースの設置によって日本の農業を変えるという大それた気持ちはない。我々が望むのは現場から「こういう人材が欲しかった」と言われる学生を1人でも多く輩出すること。活動が軌道に乗った時、「農業における大学・大学院教育とは何か?」という問題提起になれば幸いである。 (まとめ・鈴木工)

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