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新・農業経営者ルポ

「地域に元気、社員に笑顔、社会に緑の風を……」


 トレードマークの深くかぶったキャップの影からは、優しい目がのぞく。北村は、人に喜んでもらうことが生きる力になり、それが仕事の本質だという。自己実現のためには「他者実現」が必要で、人に頼まれたことをただ無心に繰り返すことで、他者実現と自己実現が表裏一体の関係にあることを農業経営を通して学んできた。これを若い人に伝え、農業の可能性を一緒になって広げていきたいと願っているのだ。

 北村と西川の一対一の面接は3時間に及んだ。若者が受け取った名刺には企業理念が書かれていた。北村を訪ねてくる青年たちとの面接が半日に及ぶことも珍しくはない。きっと北村は、人を雇うという実利だけでなく、その出会いそのものに意味を感じているのではないだろうか。そのこと自体が、北村の人生の目的であるとともに(有)親和の理念にも繋がることだからだ。北村が考えた親和の企業理念にはこう語られている。

 「地域に元気 社員に笑顔 社会に緑の風を」


青春時代の出会いが育んだ人間力

 北村は、時に厳しく、時にやさしく、若者たちを指導し見守ってきた。中には実家の田畑の作業さえ手伝ったことがないのに、この農場で友達を誘ってアルバイトをしにくる若者もいる。彼女ができると農場に連れてきて、アルバイト仲間に加わることもあった。人を呼び寄せ居つかせてしまうこの人間力の源は、いったいどこからくるのだろうか。北村は自分の原点は高校生時代に遡るという。

 「高校生の時、ブラジルやアメリカに移民として入植して畜産をしたいと、よく友人と夢を話しとったんやけど、卒業後、すぐにサイボクで1年間研修することになりましたんや」

 サイボクとは、埼玉種畜牧場のことだ。養豚のバイブルと言われている全18巻の『養豚大成』の著者でもある笹崎龍雄(96歳)が創業した畜産ビジネスの聖地で、年間380万人の来場者を誇る「農と食と健康のテーマパーク」である。北村は当時を振り返りこう語る。

 「休みの日には近くの沼で素っ裸で泳いで、夜遅くまで、生きることってなんなのか、将来の夢をどうやって実現するのか、いつも議論しとりました。特に田中さんと過ごした時間は、今でも宝物やなあ」

 田中とは本誌でもお馴染みの田中正保である。現在、鳥取で土づくりにこだわった水田稲作を大規模に実践している。多感な青春時代の人との出会いが、夢を持ち、哲学し、それを実践する強さを育み、人を呼び寄せる人間力につながっていたのである。

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