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火山灰土以外の土では、有機物と根の張り具合は見事なほどの正比例の関係にあります。有機物を施した分、根は分岐し、伸長します。礫土や砂土、赤黄色土でもこの傾向が強く現れます。これは土の中の栄養の増加、微生物の活性化、保水力の増加、保肥力の向上などが主たる原因で生じる現象と考えられます。このような土では、他のことをいろいろやったのに有機物を入れない限り畑の生産力がいまひとつ上がらないと不満を抱く人もいるはずです。しかし、有機物施用は科学的な立証こそまだ詳しくはできていないものの、土の役割を飛躍的に増大させるものということで理論と現場の考えは一致しています。現場では、いかに計画的かつ合理的に、そして低負担で有機物を施こすことができるかを重視しながら実践していくべきでしょう。
ただ、有機物といってもその性質、種類はたくさんあります。発酵させたタイプの有機物とそうでないタイプの有機物というだけでも、根張りや発根に対する影響はそれぞれ異なります。例えば、発酵過程を経ていない有機物には、ピートモスやココピートなどがあり、いずれも安定した有機資材ですが、これらは発根に対する効果はあまり期待できません。発根には、堆肥や腐葉土など発酵過程を通っているものの方が、物質や微生物の種類、数の面でも、根の伸長にとって圧倒的に高い効果が見られます。
一つだけ注意するとすれば、発酵させているといっても熟度不充分な有機資材を用いると逆効果だということです。発酵によってある物質はいくつかの段階を経て目的とする物質に変化していくのですが、その過程で作物にも微生物にも毒作用に働く中間生成物ができるのです。特に、窒素や硫黄を含む有機物が発酵途中で生成する物質には、そのような作用を持つものが多く、強い悪臭が感じられる点が共通する特徴になっています。こうした物資は根の伸長にとって極度にマイナスに働きます。水はけの悪い畑への有機物施用もマイナス作用になるので気をつけましょう。
栄養と土中水分が根張りに与える影響
次に栄養です。根の伸長に対して栄養が影響を与えるかといえば、答えはもちろんイエスです。アミノ酸の液体肥料などを使ってみて急激に作物が元気になった、旺盛な生育を取り戻したという経験をして繰り返し使っている人も多いことでしょう。その経験通り、有機液肥は根張りに有効に働きます。ただし、与える栄養の濃度やその成分バランスしだいで効果は変わります。濃度が濃すぎると根が褐変して腐敗を起こすこともあります。その点の取り扱いに注意が必要です。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
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