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農水捏造 食料自給率向上の罠

黒字農家も赤字に陥らせる、民主党「農業者戸別所得補償制度」の弊害(民主党「戸別所得補償制度」徹底分析3)


 実際の政策効果は、はなはだ疑わしい。疑似農家に税金を配ったところで、農業で食べているわけではないため、消費者目線の美味しいものを作る努力や、安く作るための生産性を高める投資には回らない。ポケットに入れて終わりだ。しいていえば小規模の趣味向け田植え機やコンバインなどの農業機械、肥料・農薬の売れ行きが伸びる。この辺の構造を株式マーケットはよくみている。民主党政権近しとなるやいなや、農地持ちサラリーマンを主顧客とする農機や農薬メーカーの株価が軒並み上昇した。疑似農家は技術力向上よりも楽を求めるため、非効率な機械の使用や化学肥料・農薬の投与量が増えると見越している。それは民主党が掲げる環境政策と完全に逆行しており、すでに世界一、農地面積当たりの排出量が多い日本の農業CO2排出量も増加させる。民主党の農業マニフェストの成果といえば、農産物の品質を下げ環境負荷を高めることぐらいだ。

 本誌の稲作読者のように、コメで所得の半分以上を賄っている農家は日本全国で3万戸しかない。300万円以上を農業所得で稼ぐ。この数では票田にならない。そのうち、真っ当な農家だと定義できる、コメの生産販売による所得が8割以上を占める世帯はわずか2000戸だ(対して、農水省職員は2万1000人もいる)。農業所得は1000万円以上である。こうした本物の農家も自民党の補助金農政に一部依存しているが、疑似農家から農地を借り受け、利益や助成金を投資に回し成長してきた。なかには国や農協にも頼らず、自ら顧客開拓をし、高い品質の農産物を生産する持続可能な黒字経営を実現している農家もいる。


所得補償がもたらす弊害

 民主党が、疑似農家にウエイトを置いた所得補償を実施するとどうなるか。

 まず、農地の“貸しはがし”が起こり、将来有望な専業農家の経営を圧迫する。疑似農家は貸す地代よりも、己が耕作したほうが国の補償で身入りがよいとなれば、農業を本業とする農家に貸していた農地の返還を求めるようになる。専業農家は疑似農家がいずれ止めるだろうことを見越して、設備投資を行ない、スタッフを雇ってきた。生産資源である農地が激減すれば、成長はおろか自活の道さえ閉ざされる。黒字の維持が難しくなり、赤字に陥る。借入金の返済も滞り、廃業を余儀なくされるだろう。

 所得補償により底上げされる農業収入は、専業農家にとって地代・農地価格の上昇も意味する。補償利潤を裏付けに、土地の生産力に比例しない価格が形成されるからだ。高い地代は生産費を上げ、収益を低下させる。新規参入者にとっては参入障壁となる。

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