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木内博一の和のマネジメントと郷の精神

企業の農業参入を甘く見るな!

 植物工場に、私は商機と同時に脅威を感じている。一般の露地や施設栽培が常識の農家にとって、植物工場での栽培は投資倒れとなりとてもうまくいかないように思えるかもしれない。だが、和郷園で試した結果、なかなかいい商品ができた。工夫次第で、生産性は飛躍的に向上する。収支も合っていくだろう。近いうちに工場としての詳細なノウハウが確立され、新参の企業でも取り組みやすくなることは想像に難くない。

 こうした技術に対して物見を決め込み、泰然とした態度を取っている場合ではない。植物工場が成功して、もともと農家でない者がいいモノを効率的にたくさん作れるようになればどうなるか。一大産地が軽く潰れ、農家の存続基盤がなくなる可能性だってある。我われ農家が、これまで通りあらゆる農業分野を独占できる前提などすでにないのだ。

 企業が参入することで、代替商品を効率的に作られてシェアを奪われる脅威にくわえ、もうひとつ、新しい市場を先行して生み出される脅威もある。今後、企業は商品開発力の強さを発揮し、野菜の機能性や栄養価をどんどん研究していくだろう。たとえば二酸化炭素濃度3000ppm(標高3000m程度の息苦しさに匹敵する)でホウレンソウを育てると、成長の早さが倍になり、栄養価も高まる研究結果があるという。このような植物環境を調整すれば、サプリメントのような機能を持つ野菜を作り出せるかもしれない。これを企業にやられたら、農家の役割はなくなってしまう。


総合力で勝負

 一般に企業が秀でているのは、一品における商品性の追求だ。対して農家の強みは一産地でいろんな農作物を作れる多様性にある。今後、農家が生き残るためには、培ってきた総合力を磨いて勝負するしかない。ただし今までのように、安穏にあぐらをかいているうちに、企業の研究開発が進み、多様性でも先行される恐れもある。一農家単位で、企業との競争に勝ち抜くのは容易ではなくなる。

 そこで提唱したいのが、農家の合併だ。単に合併するのではなく、たとえば和郷園のように地域の生産者組合がリーダーシップをとり、情報を集約できる本部を作る。そこから生産技術や取引方法、コスト効率向上など、飛躍のきっかけになるような情報やノウハウを提供していくのだ。肝心なのは、合併した農家がそれぞれ将来も強みを発揮できるようになり、農業を継続できることだ。

 「生産は農家にしかできない」という誇りを持って戸別農家が農業に励むのもいい。だが、今のうちから意識的に企業に対抗できる方法論を考え、備えておいて損はない。我われ農業経営者は、絶えず危機感を持ち、時代を先取りし、前へ進まなければならない。

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