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武田邦太郎氏

 そんな武田氏について、平成五年七月発行の「新農政」誌(武田新農政研究所機関誌)にある武田氏の論文「この国、国にあらず」を読んで、その政界出馬への心情が知れたような気がした。

 どこまで行っても主体性なく模様眺めを決め込み、既得利権の保全にきゅうきゅうとする当時の政界、官僚、団体、関連業界の状況にシビレを切らし、失礼ながら老骨に鞭打った武田氏の行動であったのだろう。

 武田氏の論文は、氏が農政研究に足を踏み入れた昭和七年ころに読んだ中国の古書に次のような言葉があることを知り感銘を受けたという文章で始まっている。

 「九年の貯えなきを不足といい、六年の貯えなきを飢えるといい、三年の貯えなきをその国、国にあらずという」と。

 そして、国土経営の水準が低く、生産性も乏しかった古代に、これほどまでに自らに戒めた名君がありえたと書いて、武田氏の年来の所論を展開している。

 武田氏は、すでに経営者は育っている。遅れているのは、政治、制度、行政、農協であるという。そうした経営者たちの能力が発揮されるような条件の整備、すなわち農業生産基盤の確立と、そのための国土計画が急務であるとする。それがまた、福祉的農業の未来を保証することにもなるのだという。そして同時に、経営者群も現在までの“社会主義的農政”は批判はしても農業の将来の可能性についてさらに理解を深めていく必要があると話す。

 曲がりなりにも、農政は新しい展開をみせた。それは七〇年にも及ぶ武田氏の農政研究が部分的にでも実現されてきているのかもしれない。

 一徹な実践派農政学者を慕う革新的農民は多い。恒例になっている「新農政研究集会」は、来年夏は青森県田舎館村で開催されるという。また同研究会発行の機関誌「新農政」は未来を思考する経営者たちにとって示唆に富む資料だとおもう。一読をお勧めする。(昆)

 武田新農政研究会の連絡先は、〒102東京都千代田区九段北四-三-ニ〇

九段フラワーホーム八F

TEL.〇三-三二四三-二九二八。

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