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視点

オンライン上にはない耕作放棄値


「サンシャイン牧場」という名前を聞いたことがあるだろうか。実際にある牧場ではない。これは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(インターネット上におけるコミュニティ型の会員制のサービス)の大手、『mixi』内で私どもが提供しているゲームの名称だ。ゲームで普段遊ばないような人たちでも誰もが興味を持って楽しめるものを作るという発想のもと、中国の企業であるRekoo Mediaが開発した。現在、中国だけでなく米国やロシアなどでもサービス提供中で、世界中で1日あたり1,200万人もの人がこのゲームで遊んでいる。日本では、2009年8月にスタートしたが、わずか3カ月足らずでユーザー数は300万人を超える勢いで伸びている。
内容は、プレーヤーがバーチャルな農場を開いて、種を植えて収穫するというシンプルなものだ。作物に肥料や水をやり、虫が付いたら殺虫剤を撒く。実がなるとそれを売って、ゲームの中での資金を得ることができるなど、農業そのものの楽しみを味わえる。またプレーヤー同士がつながっているという“ソーシャル性”を生かし、作業をお互いに手伝ったり、いたずらで害虫を入れたりなどの様々な形のコミュニケーションがとれることも、このゲームの最大の特徴だ。

農業を楽しみたい潜在的需要

このゲームが受けているのは、プレーヤー同士が競争して勝ち負けを決めるのではなくて、遊んでいる人たちがコミュニケーションを通じて皆ハッピーになれる、ハートウォーミングな点にある。これはおそらく世界共通だろう。ただ、日本においては、昨今の農業ブームも後押ししてくれた部分も少なからずあるだろう。
農業が見直されつつあるとはいえ、今の仕事を捨てて就農する人は多くないし、市民農園を借りる時間的・金銭的余裕などがない人もいるだろう。しかし、作物を育てるという農業本来の魅力を、パソコンやモバイルを通じて手軽に楽しみたいという人が潜在的に多かったことを示しているように思う。オンライン上には、耕作放棄地はないということだ。

IT業界と農業界の違い

農業の門外漢ながら思うことがある。サンシャイン牧場の成功を追う形で、他社発の農業ゲームが次々に登場している。このようにIT業界は競争が激しく、政策で保護されることもない。そういう観点からみると、個々の農家は頑張っているとはいえ、産業構造にはゆがみがあるのではないだろうか。
今後は、青果物流通業者と組んで、プレーヤーがバーチャルで育てた野菜を届けるサービス展開も検討中だ。ゲームというメディアで、農業界に少しでも尽力できればうれしい。(まとめ・長浜淳之介)

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