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農協組織が民主党政権に冷たくあしらわれる理由
ここで、わが山田正彦副大臣の政界プロフィールを説明しておこう。もともとは旧経世会系の流れを汲みながら、1979年に日本新党から初出馬。93年総選挙で、4度目の挑戦で新政党公認候補としてようやく当選。政界入り後も、故小渕恵三氏や二階俊博氏から派閥入りを誘われたことがあったが、ひたすら小沢氏と政治行動を共にしてきた。副大臣に登用されたのは、小沢氏の信用が極めて厚いからである。
その小沢氏は農協組織と距離を置く。その流れを汲んだのかどうかは知る由もないが、赤松大臣以下、政務三役は農協組織に冷淡だ。全中の馬場利彦農業対策部長が、11月11日、公明党の農林水産部会と意見交換した際に、こんな泣き言を漏らしている。
「政策提言を農林水産省へ提出したものの、同省の政務三役と話し合う機会すら持たれなかった」(11月12日付け公明新聞)
農協組織が、民主党政権に冷たくあしらわれているのは、選挙戦でいまなお自民党の重要な集票組織であることだけではない。FTAやWTO交渉で関税引き下げに反対する「抵抗勢力」であるからだ。全中など全国組織を徹底して無力化することにより、参院選後に想定される低率関税受諾の環境整備をしているようである。
先の講演会後の質疑応答。なぜか質問で過剰米対策のことが出なかった。全中は、11月5日に「戸別所得補償制度および水田農業政策にかかるJAグループの政策提案」(略称・政策提案)の中で、過剰米対策の必要性を訴え、「どうしても生じる過剰米の出口対策が必要であり、政府買入の実施と、非主食用処理に対する政府としての対策を構築すべきである」と要求している。
これに対し、政務三役に近い筋に聞いたところ、「全中が何を言ってこようと、過剰米対策は絶対にやらないよ」と素っ気ない。その理由をこう説明する。
「米価が下がっても農家は戸別所得補償で減収分を補てんされる。農協は、売る力もないのに、商人系業者と張り合って概算金を高くして集荷している。売れ残ったら自民党農政族を使って過剰米を国に無理矢理買い上げさせてきた。この悪しき構図にピリオドを打ち、需要にもとづいた売れるコメづくりに力を入れて欲しいのだ」
この数年、農協組織の傍若無人ぶりは目に余った。コメが過剰になれば、自民党農政族を動かし、過剰米を緊急買い上げさせてきた。その都度、国民に財政負担を強いてきたのである。当時、農協組織の意を受けて政府に買い上げを強要したのは、加藤紘一、谷津義男、西川公也各氏の農政三羽烏である。加藤氏以外は、あえなく落選され、政権交代とともに自民党農政族は瓦解してしまったのである。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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