記事閲覧
視察のため、人生で初めてヨーロッパに行ってきた。訪れたのは英国、ドイツ、フランス、オランダの4カ国。結論から言ってしまえば、農業でことさら学ぶことはなかった。逆に言えば、日本の農場の技術水準は畑作でも畜産でも、他の先進国と同じか、個々をみればそれ以上だと確認できたことが収穫だった
それでも自分の子供を留学させるならという視点ならば、訪問4カ国中断トツ、オランダである。そこには徹底した合理主義と未来志向があった。他の国はフランスのように観光資源であったり、英国なら植民地時代のインフラ投資であったり、過去や先人の遺産を使って経済が成立している感がある。九州と同じ面積で国土の大半が水面下にある小国オランダは、世界に通用するシステムを作り続けることで未来を見据えている。
そして先のことを考えて手を打ってきた結果、前回の連載でもふれた「フードバレー」のような“知”を集結させるプロジェクトを実現させている。
知と知をつなぐ
「農と食のシリコンバレー」と形容されるが、何も大層なことをしているわけではない。単純にいえば、知の最前線にある大学とその研究ネットワークのブランド化である。
ワーゲニンゲン大学という農業研究で世界的に有名な大学がフードバレーの中心にある。その大学が呼びかけ、研究者、企業、公的機関をまきこんで食ビジネスの未来を一緒に創造しようと集ったのが「フードバレー・ソサイエティ」というゆるやかな会員制の組織だ。
この組織のキーパソンは実は、学者でも官僚でも企業の研究者でもない。ソサイエティが雇うコーディネーターの女性30人ほどだ。彼女たちの仕事はいわば御用聞き。「こういう商品を作りたい」「こういう研究をしたい」とメールで投げかければ、「こんな先生がいます、こんな企業があります」と紹介してくれる。そうして知と知をつないだ結果、期待感が吸引力を生み、世界中から企業や情報が集まってくる。
会員の方はここからログイン

坂上隆 サカウエタカシ
農業生産法人 株式会社さかうえ
社長
1968年鹿児島県生まれ。24歳で就農。コンビニおでん用ダイコンの契約栽培拡大を通して、98年から生産工程・投資・予算管理の「見える化」に着手。これを進化させたIT活用による工程管理システム開発に数千万円単位で投資し続けている。現在、150haの作付面積で、青汁用ケール、ポテトチップ用ジャガイモ、焼酎用サツマイモなどを生産、提携メーカーへ全量出荷する。「契約数量・品質・納期は完全100%遵守」がポリシー。03年、500馬力のコーンハーベスタ購入に自己資金3000万円を投下し、トウモロコシ事業に参入。コーンサイレージ製造販売とデントコーン受託生産管理を組み合わせた畜産ソリューションを日本で初めて事業化。売上高2億7000万円。08年から食品加工事業に進出。剣道7段。
坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス
ランキング
WHAT'S NEW
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2020/12/17)
