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坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス

世界第2位の輸出国オランダの未来志向



 何より驚かされるのは、訪問者のリクエストになんとしても応えようとする個々人の姿勢である。私のような一介の農業経営者が日本から訪れても、世界的な研究をしているワーゲニンゲン大学の教授達が、「どうしたらもっとお役に立てますか」「我われの持っている知識をどんどん使ってください」という態度で会合に臨んでくれた。私の関心、要望に応じて独自のプレゼンテーションがしっかり準備されており、どの会合も時間どおりに目的が果たされる。未解決の問題があれば、ミーティング後にフォローのメールが入ってくる。

 かといって予算がフンダンにあるわけでもない。対応してくれたコーディネーターの女性は、ベビーシートのある自家用車を使って、次々と手際よく会合場所に連れていってくれた。あらかじめ、幼稚園の子供の迎えがあるからと途中の旅程からはタクシーが手配されていた。昼食はサンドイッチのランチボックスが用意される。サンドイッチ片手に若い研究者と議論を戦わせたり、新しいプロジェクト立ち上げの方法論について教わったりもした。

 フードバレーという食の未来を創っていこうという理念を皆が共有し、等身大の働きをしている。そこに参加すれば何か起こりそうな希望が存在するのだ。


与えられた役割を果たす

 私は「日本もオランダに追いつこう」という結論を導きたいわけではない。農業、そして食品産業として見ても、やっていることに大差はないし、個々の商品でみれば日本の方がずっと上のような気がする。日本の学者の研究レベルも世界水準であるだろう。今のところ、ちょっとしたボタンの掛け違いで、日本が遅れを取っているようにみえるだけに過ぎない。

 だがその掛け違いで、オランダは米国に次ぐ世界第2位の農産物輸出国、日本は最大級の輸入国となった。

 日本では学者なら学者だけが集まり、学問が産業とつながるかどうかは関係ないという雰囲気がある中、オランダでは「オランダ人が世界の農業をリードする!」という意識が、受付の事務員レベルからトップ研究者まで行き渡っている。農業・食産業の発展に、自分に与えられた役割の中で貢献したいという気概と謙虚さがある。

 日本人に必要なのはただ、思考方法を未来起点にすることではないだろうか。

 年に一度開催される「フードバレー会議」の今年のテーマは、「食産業の将来は食べながら肥満を解消する商品開発。それが飽和しない未来市場だ」。いまや肥満は先進国だけでなく、新興国や発展途上国でも共通する課題である。これを解決する方向性を示す場をつくることで、オランダは食市場の将来においてフラッグシップをとっていく。

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