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前回取り上げたトリュフは世界三大珍味のひとつですが、バルカン地方で三大珍味のすべてが揃うことはあまり知られていません。
まずフォアグラです。日本にはフランス産はもちろん、ハンガリー産も入っていますが、実はハンガリーの南にあるルーマニアやブルガリアでも作られています。アヒルや鴨の雛をある程度の大きさまで育てた後、急激に太らせるために漏斗で餌を押し込むのです。この光景はたしかに見た目が残酷のため、フォアグラ料理を禁止するところまでありますが、珍味の魅力に勝てない食通がいる限り需要はあるのでしょう。ルーマニアの業者は輸出余力がありませんが、ブルガリアの業者は日本へ輸出したいと言っていました。
キャビアは、チョウザメが絶滅危惧種として捕獲を禁じられたため、ロシア産がどうなるのか気になるところです。黒海、ドナウ河で捕獲されたチョウザメから取れたキャビアが日本へ送られたこともあります。現地で筆者の食べたキャビアが本物かどうかも怪しいとはいえ、バルカンの珍味を日本でも味わえると良いのですが……。
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古来よりバルカン地方の産業は農業中心だったせいか、近代化には遅れを取りました。未だに農家は充分に豊かになる機会を得ていません。ハプスブルク家やトルコの支配が永く続いた後は、動乱の19~20世紀を過ごしました。1989年にベルリンの壁が崩壊し、自由が訪れる直前まで、鉄のカーテンで仕切られた社会主義体制に組み込まれていたのです。
何があってもそこに農民はいたのですが、広大で豊かな土地を意欲的かつ有効的に利用しないままきたので、収穫量や収入を増やす手立てが取られませんでした。特に社会主義体制において個人の意欲が生かされなかったことが、未だに尾を引いているかもしれません。
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越川頼知 コシカワヨシノリ
1972年三井物産�入社。2001〜2006年に同社セルビア・ベオグラード事務所長として、戦後間もない旧ユーゴ諸国をくまなく見て回る。2007〜2008年には同社ブルガリア発電所改修工事事務所長として、バルカンの奥深くまで足を伸ばし、帰任後は同社電力第二部にてバルカン地域の各種プロジェクトを手がける。
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