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農水捏造 食料自給率向上の罠

米戸別所得補償モデル事業の矛盾露呈、自給率向上目標で自滅する民主党農政(民主党「戸別所得補償制度」徹底分析5)




需要を無視した数値目標に疑問符

 公表された数字を見ると、1%向上に必要な増産は、コメで7万ha、米粉5万ha、飼料用米48万ha、小麦9万ha、大豆15万haになる。要する金額は、自給率向上を目的に農水省が来年度予算として概算要求している「米戸別所得補償モデル事業」および「水田利活用自給力向上事業」の10当たりの助成単価から試算できる。コメなら約140億円、米粉400億円、飼料用米3840億円、小麦675億円、大豆930億円となる。金額を合計すると、5985億円になる。この予算で、それぞれ1%の向上効果だから、5品目で5%の向上効果があることになる。

 一番安上がりなのはコメの175億円だ。民主党が10年後の目標とする50%まで9%(現在41%)だから、175億円の9倍1575億円で予算上、達成できることになる。

 ところが、農水省の来年度の米戸別所得補償モデル事業予算は2167億円だ。1575億円の1.4倍ある。純粋に14%の向上予算ということになる。民主党の50%目標を一気に突破できるはずだ。ただし、問題はコメの自給率が現在ほぼ100%という点だ。いくら増産しても、食べる人がいなければ無駄になるのは誰でもわかる。しかも、2167億円は「水稲共済」に加入する約180万戸のうち、供給過剰を防ぐために設定する生産目標を守った農家を支払い対象にしている。つまり、増産を抑えるための予算であり、自給率向上政策と完全に矛盾する。

 この点をついたのが藤井財務大臣だ。11月20日の閣議後の記者会見で、農業の戸別所得補償制度について「(自給率100%近い)コメからやるのは順序が(自給率向上の政策目的と)逆ではないか」と述べ、2010年度からコメの補償を先行実施する農林水産省の方針に疑問を表明。補償の対象を麦や大豆などの転作作物に絞り、コメ予算の圧縮を目指す考えを示した発言だ。追い打ちをかけるように、菅直人副総理兼国家戦略担当相は、「民主党は一貫して所得補償制度で小麦や大豆などを増産し、自給率を上げるといってきたではないか」と山田正彦農水副大臣に質した。

 これまで「聖域」扱いだったマニフェストの目玉政策、コメの所得補償がその目的に反することを指摘した格好だ。農水予算と自給率向上の関係性が今後厳しく問われる方向に向かっている。

 5618億円を自給率関連で概算要求している農水省は、「その自給率向上の効果と根拠を示せ」(食料・農業・農村審議会)と、すでに問われ始めている。自らの発表した数値がもたらすことの重大さをまだ理解していない官僚は、「やってみないとわからない」といまだ無責任な発言に終始する。

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