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小国オランダ大国に勝つ理由
オランダ農業はなぜ国際競争力があるのか、研究者(写真3)に聞くと即座に5つの理由を教えてくれた。
1)農家が「どうやって利益を出すか」のために絶えず投資する。経済、技術、販売の3分野で農家が出資した団体がその役割を担っている。
2)国産、外国産を問わず、強みを発揮できる食品分野で商品開発を展開。その結果、世界に市場が広がり、国産需要が増大する。人口小国=内需の限界をカバーする成長戦略だ。
3)国際競争力が利益の源泉と認識する。農場倒産などのマイナスに見える要素も肯定的に捉える風土があり、生産性の低い業界をあえて底上げせず、高い業界を伸ばすことに注力する。
4)先端技術や新品種、農業資材を積極的に海外移転する。その結果、開発企業の国際競争力が高まり、農家は、国際標準技術を低コストでいち早く使える恩恵を得る。
5)農業政策に関して、生産者団体、政治家とが同じテーブルについて立案する。現場サイドの合意を得ているため、その実施、普及スピードが速い。「だから、オランダにはフランスやドイツと違って、農家の抗議運動やデモがない」と言い切る。建設的だ。
農業大国フランスでみた伝統的畜産と新たなトレンド
世界最大級の畜産業界展示会「ソム・デュ・ルバージ」をみてきた。世界50カ国から、展示企業1150社、来場者8万人が集った。開催地クレルモンフェランはフランス中部の畜産地帯の中心に位置する。
会場では1800頭の家畜展示も行なわれたほか、展示分野は、畜産、牧草、畑作、草刈り関連が中心。
膨大な展示の中、日本でも有益そうな機械類としては4分野あった。草地転換用の作業機、多様なオプションを持つモア、大型トレーラー、一部の林業機械だ。注目すべきは、農場設置用のソーラーパネルが活況を呈していたこと。農家の新たな収入源として再生エネルギー投資が進むトレンドを垣間みた。
その後、肉牛の一貫経営をする畜産家を訪問。山間放牧を取り入れており、夏季は放牧し、冬季は牛舎の中で飼育する体系だ。80頭の搾乳牛と15頭の乾乳牛を母体にした経営体系。耕地総面積は310ha、そのうち牧草地は150ha、飼料用穀物生産地は30ha。牧草は干草が中心で、収量は3・7t。売上はわずか9万1500ユーロ(1200万円)。直接支払はha当たり137ユーロ(1万7900円)で、310haでは4万2470ユーロ(560万円)を受け取っている。
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坂上隆 サカウエタカシ
農業生産法人 株式会社さかうえ
社長
1968年鹿児島県生まれ。24歳で就農。コンビニおでん用ダイコンの契約栽培拡大を通して、98年から生産工程・投資・予算管理の「見える化」に着手。これを進化させたIT活用による工程管理システム開発に数千万円単位で投資し続けている。現在、150haの作付面積で、青汁用ケール、ポテトチップ用ジャガイモ、焼酎用サツマイモなどを生産、提携メーカーへ全量出荷する。「契約数量・品質・納期は完全100%遵守」がポリシー。03年、500馬力のコーンハーベスタ購入に自己資金3000万円を投下し、トウモロコシ事業に参入。コーンサイレージ製造販売とデントコーン受託生産管理を組み合わせた畜産ソリューションを日本で初めて事業化。売上高2億7000万円。08年から食品加工事業に進出。剣道7段。
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