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新・農業経営者ルポ

生産者と顧客の間で新たな需要の創造目指す


 岩瀬が契約している総菜メーカー「ロック・フィールド」は、デパ地下を中心に全国で「アール・エフ・ワン」というブランドを中心に約300店舗を展開している。まさに中食業界におけるリーディングカンパニーである。水菜やひじき、湯葉といったサラダに馴染みのない素材を取り入れ、商品化してきたことで一躍有名になった。

 消費者のニーズに合ったサラダを生み出すために、岩瀬は総菜メーカーの担当者とともに東京の輸入野菜の店に足を運んで、次に伸びそうな野菜を探すこともある。また、種苗メーカーとタイアップして、まだ品種名がなく分類番号だけしかないレタスを、自社の試験圃場で自ら栽培し、魅力のありそうなものをメーカーに提案したりもする。

 メーカーの担当者も、しばしば岩瀬とともに契約農家の圃場をまわって『こんな色の、このくらいの茎の太さのものができないだろうか』と要望を出す。岩瀬は、そのリクエストに応じて生産者とコミュニケートしながら品種の改良に取り組む。これまで流通以外では接点のなかった生産者とメーカーをつないで、消費者のニーズに合ったレタスを共同で開発していく。そこに岩瀬のビジネスのユニークな点がある。

 「我われはいわばコーディネーター企業です。これまでは生産者はただ作るだけ、それを農協が買い上げて市場へ持って行き、仲卸が小売業者に販売する、という一方通行で、相互のコミュニケーションはほとんどありませんでした。生産者は自分の作ったものが、どうなるかも知らないわけです。そこで、うちでは定期的に生産者と総菜メーカーの交流会を開いて、生産者に自分たちの野菜で作った総菜を試食してもらっています。すると生産者は『ああ、この部分はこんなふうに使われるのか、それならもっと丁寧に扱わなくては』と思ったり、総菜メーカーも毎年積極的に契約畑を訪れて、生産者との意見交換を通じて『この野菜にはこんな性質があるなら、こんな商品ができるのでは』と思ったりする。そうした相互交流が、有益なパートナーシップを築いていきます」


成功する農家が増えれば農業は変わる

 クリアライズでは現在、ホウレンソウや紅芯大根、果実類などの取り扱いもあるが、メインのレタス類ではその8割を「ロック・フィールド」に、2割をオーナーシェフのレストランなどに卸している。その売上額は年々上がり、2億、4億、6億、8億、そして一昨年は10億円へと達したが、その後、9億、7億とやや落ちてきた。しかし、岩瀬にとっては、それはむしろ「自分の求めていたビジネスモデルに近づいてきた感がある」という。

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