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新・農業経営者ルポ

生産者と顧客の間で新たな需要の創造目指す


「経営者なら誰でも売上を伸ばしたい気持ちはあると思います。以前は我われもレタス以外にいろんな品目を扱い、総売上を伸ばすという方向でやってきた面があります。けれどもそれを続けると、売上は増えても、経費は余分にかかります。仕事にかかるオペレーションが増え、従業員も増えることになっていきます。それは私の目指しているものとは違う気がしたんです。ある程度『選択と集中』をすることで、売上は減っても利益が上がる形にしたかった。その結果、売上は少し落ちたけれど、いまのほうがうまく回っていると思っています」
 クリアライズの契約生産者は現在約50軒。10~5月までが茨城と埼玉、群馬。5~6月が山梨、7~9月が長野というサイクルで産地をリレーしている。岩瀬の目標のひとつは、これまで取り組んできた契約栽培のノウハウをプラットフォーム化して全国的に標準化することだという。

 「契約栽培が普及してきたとはいえ、いまだに生産者ごとの個別対応です。これから参入したいという農家にとっては、まだまだ敷居が高い。けれどもノウハウを標準化すれば、契約栽培のリスクとメリットをはっきりさせられます。そのプラットフォームに参加すれば、リスクなく契約栽培の恩恵を受けられるようになるという形を作りたいんです」

 岩瀬は、日本の農業の弱点は情報だという。生産者をはじめ、肥料や種苗、資材を取り扱う各メーカーは個々には膨大な農業情報を持っている。けれどもその情報の流れがどれも縦割りで、トータルで生かすことができる横軸コディネーターがいない。もし情報をデータベース化して、誰もが利用できる形ができれば、耕作放棄地の問題、土地の賃借、契約栽培から跡継ぎ、お嫁さんに至るさまざまな農家の問題に対応できるのではないかと岩瀬の夢は広がる。

 「いまの日本の農業のあり方を変えるうえで、いちばんいいのは成功する農家がたくさん出ることだと思います。契約栽培は、そのための方法論のひとつだと私は考えています」

親子二代にわたって開拓してきた契約栽培というノウハウ、それは今後の日本の農家における成功への方程式かもしれない。岩瀬の力強い言葉から、そう確信させる強い自信が伝わってきた。   (文中敬称略)

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