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赤松大臣は数字をどこで知ったのか
ここで一つの疑問は、農政に土地勘がないと自認されている赤松農水大臣が、どうやって六十何%という数字を知ったかである。農水省の官僚が大臣の耳に入れたというようなことはない。ある意味で、農水官僚は秋田県行政関係者と同罪にあり、そんなことを大臣に耳入れするはずはないと思うからだ。
農水省、秋田県庁を取材すると、こんなことが分かった。大臣が記者会見で怒りをぶちまけた約1ヶ月前に、BSフジテレビの討論番組で大潟村・あきたこまち生産者協会の涌井徹代表が赤松大臣と同席していた事実があった。涌井代表のブログにも、大臣の大潟村訪問を「ところで、事前の連絡はあったのだが、今日、正式に赤松農水大臣が11月26日に協会の視察に来るとの連絡が入った。11月5日のBSフジテレビにおいて赤松農水大臣と対談したときに、『大潟村に来て欲しい』とお願いをした」との記述がある。
また別の筋によれば、「涌井代表がペナルティの軽減を求めて農水幹部に直接アプローチしていた」(県庁関係者)という情報もある。
かつて新進党代議士を務められた笹山登生先生が、自身のブログで「赤松農相が、大潟村に謝罪というが、おかしくね?」と題した文を綴っておられる。笹山先生は、中選挙区時代の秋田3区(湯沢市など)から出馬され5回の当選を重ねられた。その笹山先生が、赤松大臣発言に対する秋田県内の意見を次のように代弁しておられる。
「つまり、大潟村の自主作付け派にとって、近時のコメ販売環境の変化で、これまでスキミング(不正行為という意味か)してきたような優位な販売戦略構築が難しくなってきている中で、ここで減反遵守宣言をし、戸別所得補償スキームになだれ込むことによって、自主作付け路線の転換・撤退費用の原資として、戸別所得補償スキームを累積負債整理のツールとして利用しようとしているのではないか、ということについての疑心暗鬼が、県内一般農家の中にはあるということですね。この限りにおいて、県内一般農家は、またしても、彼らの踏み台にされてしまうというわけです」
すべて賛同とはいかないけれども、なかなか鋭いところを突いている。とりわけ筆者をうならせたのは、「戸別所得補償スキームを累積負債整理のツールとして利用しようとしているのではないか」というフレーズである。大変気になる点でもあるが、笹山先生は何のことを言っておられるのだろうか。小生がもっとも知りたいところである。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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