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日常生活に生活習慣が必要なように、ある職業に就く上でまず獲得しなければならない入門第一歩が職業習慣です。仕事は本来、結果がさらに良くなるようにしていくための取り組みですが、職業習慣を身に付けることで、ひとまず先輩たちと同様の結果が出せるようになるわけです。
米作地帯や産地と称されるところでは多かれ少なかれ同じ作物を皆で作付けする傾向がありますが、そこで最も大事になってくるのは、身につけた職業習慣が正しいかどうかを判定する方法と、もし誤っていた場合にどう対処するのかということです。土壌の場合は、土壌診断のやり方とその処方を決定することで、職業習慣の正否を明らかにすることができるようになるのです。
土壌改良が越えた3つの時代
ここからは土壌改良についての理解が深められるよう、戦後から現在までの流れを整理していきたいと思います。土壌改良は大きく3つの時代に分けることができます。
一つは、土の管理方法に取り組み始めた戦後開拓時代です。この時代には農業資材が極めて不足していました。肥料もその例外ではなく、貴重な肥料をどのようにして有効に使うかという知恵比べの時代だったといえます。土壌は痩せきっていて、低pH、石灰・苦土・リン酸・カリ・微量要素不足と、土の欠点がそのまま表れている状態でした。
1960年代前半からは、成分不足改良達成の時代と言えるほどの変化が起こります。重化学工業の立ち上がりにより、尿素、硫安、塩安、硝安といった窒素肥料、そして輸入肥料が一般農家にも入手可能になり、過リン酸石灰や塩化カリ、硝酸カリと肥料三要素が稲や畑作物に施されるようになりました。
強い酸性土壌であったために作物は育たず、それを改良するということで石灰や苦土を施さなくてはいけないという世の中の流れが大変に強くなりました。国や県も農林行政も、全体で事業を推進したことから農村社会に大きな気運が作り上げられた時代です。
実際、日本の土の欠点である石灰、苦土の不足を改良するための炭酸苦土石灰を主とするアルカリ資材の施用が各地で実行され、ほぼすべての畑の酸性は改良されました。
それまでホウレンソウなどが全く育たなかった畑から野菜がふんだんに採れる時代が到来し、不足成分を補うことに成功して各地に有名大型野菜産地というものも誕生しました。急成長する大手スーパーの展開にも大きく寄与して、大量生産、大量消費の農業構造をつくり出したのもこの時代です。
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関祐二 セキユウジ
農業コンサルタント
1953年静岡県生まれ。東京農業大学において実践的な土壌学にふれる。75年より農業を営む。営農を続ける中、実際の農業の現場において土壌・肥料の知識がいかに不足しているかを知り、民間にも実践的な農業技術を伝播すべく、84年より土壌・肥料を中心とした農業コンサルタントを始める。 〒421-0411静岡県牧之原市坂口92 電話番号0548-29-0215
過剰の対策、欠乏の克服
「土壌診断」という言葉は農業界に浸透し、多くの人がその必要性を感じているものの、調査は専門機関に委ね、その処方に基づいた施肥を行なってきたのが現状だ。ここでは現場で農業者が主体となって行なう土壌調査と診断方法について紹介していく。
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