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生シイタケ 「国産の安心」を前面に演出した販売策を
【概況】
生シイタケは、年明けから入荷は徐々に減少し始めて夏場に最低となり、秋から上げに向かうが、低温のために入荷数量は高原状態となる。しかし需要そのものは年末にピークを迎えて、価格は高騰するのが常である。いわゆる鍋物需要との相関が高く業務用が相場を引っ張っていく品目でもある。ところが、昨年は中国産の入荷が増え、とくに年初めと年末に急増した。鍋物需要対応という意味もあるが、中国産は菌床栽培であるために体質が弱く、低温期向きという側面もある。年末に向かって急増したことから相場は冷えたが、この安値推移が今年の年明けからの需要増につながった。
【背景】
昨年は、東京市場における中国産のシェアが主産地の群馬一八・八%に対して一七・六%という肉薄を見せた。そのため、二~三月、一一~一二月はついに産地別シェアでトップの「産地」に躍り出ている。価格的にも国産が一二〇〇円前後に対して、中国産は半分のキロ六六〇円程度。中国産の参入で全体の平均キロ単価は一〇〇円以上安くなったが、だからといって国産の足を引っ張ったわけではない。国産は国産なりの評価で推移していた。これは、中国産がはっきり分かる「菌床栽培」であり、安値販売品目として、国産が逆に差別化された結果でもある。輸入品と国産が、流通・販売面で明確に棲み分けができた典型的な例となった。
【今年の対応】
今年はすでに、年の前半で昨年の年間輸入量に匹敵するだけの中国産生シイタケが入ってきている。一方で、干ばつ、猛暑という要因から国産の発生も抑制されて、相場は堅調である。国産=ホダ木、輸入=菌床といった区分と需要の振り分けができており、小売店筋からは「安さのため従来より生シイタケを購入する客が増えたが、これによって、逆に国産の品質の良さが認識されている」という消費者の反応が報告されている。少なくとも、国産に関しては価格が暴騰することはないが、今後も安定した評価が続くだろうが、国産でも菌床栽培を導入している産地の対応がカギになる。できるだけ「国産の安心」「生産者の顔がみえる」といった演出が大切になるだろう。
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小林 彰一 コバヤシショウイチ
(株)農経企画情報センター
代表取締役
青果物など農産物流通専門のジャーナリスト。(株)農経企画情報センター代表取締役。「農経マーケティング・システムズ」を主宰、オピニオン情報紙『新感性』を発行。著書に、『ドキュメント青果物市場』、『日本を襲う外国青果物』、『レポート青果物の市場外流通』、『野菜のおいしさランキング』などがあるほか、生産、流通関係紙誌での執筆多数。
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