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たとえばここにダイコンがあるとするでしょ。だけどダイコンをダイコンとして見るか、ダイコンじゃないと見るかによって提案の仕方は違ってくる。「おろしで食べるとうまいよ」とか「漬け物にいいよ」っていうのは、あくまでもダイコンとしての提案でしょ。そうやってダイコンをダイコンとして提案するのは誰にでもできるわけ。だけど俺は最初からダイコンと意識しねえで、これを肉というイメージで提案するにはどうすればいいかって考える。そうすっと、たとえばブツ切りにしたダイコンを適度な噛み応えがあるようにソテーしてカラスミをのせると、少量のカラスミでもたくさんの肉を食べているような食感の料理になる。こういう風にダイコンを食べたことがあるかって振り返ったときに、そんな経験はないでしょ。だったらこれはもうダイコンだけどダイコンじゃないってことになるじゃんよ。
そんでこのとき、栽培の特徴なんかもちゃんとシェフに説明するといい。たとえば余計な肥料で育てた場合、ソテーしたダイコンから水が出ちまうもんだけど、うちのダイコンはそれがない。そういう商品の情報も付加価値になるのよ。
調理するのは俺だけじゃねえよ。逆にシェフにもキッチンに立ってもらって、うちの野菜を料理してもらう。そうすっとシェフの感性とか野菜の扱い方とか、貴重な情報が目の前で収集できるじゃん。しかもここではお客に対して料理をつくるわけじゃねえから、普段以上にシェフの自由な発想が出てくる。もちろん俺は料理に関してはアマチュアだけど、シェフから得られる情報は新しい発想のヒントになる。そして何より、俺の野菜の付加価値をシェフと共有できることになるのが大きいんだよ。
今でも多くの生産者は、自分の商品の付加価値を消費者と共有できていないじゃん。スーパーのセールなんて、ただカットしたダイコンを並べているだけじゃんよ。セールってのは高く売れないんだよ。安いことだけが価値になってるの。だったら店頭でダイコンのメニュー提案でも何でも積極的にやったらいいんだよ。やらねえでいい理由なんてどこにもねえだろ? スーパーがやらねえっていうなら、生産者が自ら動いたらいいんだよ。パチンコなんか行ってねえでよ。せっかく消費者は生産者の顔が見えるのがいいって言ってるんだから。そうやっていざ一度でも行動を始めると、次にやるときはただマネキンをやるんじゃつまらねえから、何かパフォーマンスでもやろうかなってことになってくるの。提案力ってのは、そういうことの繰り返しで身に付いていくんだよ。
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浅野悦男 アサノエツオ
エコファーム・アサノ
オーナー
1944年生まれ。千葉県八街市の「エコファーム・アサノ」オーナー。2.5haの圃場で100品目を超える西洋野菜を栽培し、全国のレストランに販売する。ユニークな発想から生み出されるメニュー提案が、イタリアンやフレンチなどレストラン関係者の注目を集め、取引先のシェフたちが「農場参り」を行なっている。
エコファーム・アサノ 脳業発想力
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