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坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス

さかうえ農業の使命は「Cの循環」



 飼料として栽培するトウモロコシはC4植物と呼ばれ普通より炭酸同化作用が高い。C4植物は水が少なくても光合成が十分に行なえ、普通の植物と違って高温の時にもCO2を集められる。育てるほどに炭素の吸収率が高まる植物である。その作物に、堆肥などの未利用資源を活用して、植物の力を引き出し、燃焼効率(燃費)の良い最新の大型機械を使って大量生産する。太古から続く有機物循環の農業に、いまの技術をダイナミックに活用してみたとき、未来につながる事業ミッションを見出すことができたのだ。

 Cの循環を使命に置くと、農業生産の意義と方向性は自ずと明らかになる。耕作放棄地の解消、規模の拡大、循環に適した作物の増産、生産の合理化などだ。似た農業の方向性でも目的が短期的な利益追求なら、その到達点はその時々の農場経営者の事業欲の範囲にとどまるだろう。しかし、地球環境の改善を目指したとき、そのゴールに果てはなくなる。そして、永続的に価値を生み出せる農場になれる。社員や関係者、地域にもっとこの考えが浸透していけば、農業に対する仕事の姿勢も磨かれていく。さらには、世の中の農業への価値観ももっと高まっていくのではないか。

 昨年、ヨーロッパ視察の際、このような思考法が農業を語る前提になっている様子を目の当たりにして、自分の考えに自信を深めることができた。

 どの農業関係者に会っても、環境がベースにあり、それをどう経済的に合わしていくかが、長期的なスパンで研究され、経営の焦点となっている。ワーゲンニンゲン大学のバイオ経済学准教授ルイーザ・トリンデード女史が書き記してくださった、農業における環境負荷と経済価値の相関ピラミッドを紹介しておこう(図1)。私の思考整理にもたいへん役立ったチャートだ。


帳尻を合わせ続けるのがプロ

 日本では最近エコブームといわれ、省エネだからと家電や車の販促に国のエコポイントが付いたりしている。この背景に、経済活動と環境保全とは利益相反するものと当事者たちが疑ってかかっていることがあるのではないか。例えば、鹿児島の農業においては、露地野菜で10a当たり、15万円の売上がたたなければ収支が合わないとみなされている。だが、飼料生産はコメ余り政策として行なわれており、見合う売上はたたないものという常識のもとで、なんの基準もなくやみくもに多額の補助金が費やされている。

 さかうえでは試行錯誤を重ねた結果、飼料生産において、製造原価6~7割を実現するに至った。いま合わないのなら、合わせるのがイノベーションであり、帳尻を合わせ続けるのが経営のプロだ。地球視野からみれば、環境と経済は、本当は必ず合うはずだという信念を持って、取り組んでいる。

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