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【農水捏造 食料自給率向上の罠】
「農家の豊かさ世界ランキング」本邦初公開 日本の農家は世界第11位
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第17回 2010年02月01日
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「2月号で日本の農業GDPが世界5位で高いことはわかりました。しかし、現実には日本の農業に豊かな産業というイメージはないように思います。世界的にみて日本の農家はどうなのでしょうか」(読者から筆者へのコメント)
今回はこの投稿に応える形で記事をまとめていこう。
おっしゃる通り、GDPの規模と一人当たりの豊かさは比例していない。例えば、いくら中国が世界第一の農業大国(2010年2月号・59頁「世界の農業GDPランキングTOP20」参照)といっても、一人当たりの農業所得は平均で年間2万円ほどにすぎない。中国の農民に「あなたの国の農業GDPは世界一ですよ」と伝えたところで、その農民個人が実感する幸せとは何ら結びつかないだろう。
GDPの大小で国力を競うのは、一種のナショナリズムで、オリンピックにようなものだ。最近、「中国GDP、2010年にも日本超え 世界2位の経済大国へ」との報道が賑わったが、その一例だ。
中国人の生活水準が日本人を上回ったわけではない。生活の豊かさは一人当たりのGDP、とくに物価差や為替効果の影響を受けにくい購買力平価(PPP)で比較した一人当たりGDPをみなければわからない。
とくに日本のように人口減少が進む社会では、全員での成果(GDP)よりも一人当たりの成果(GDP)の向上のほうが豊かさの指標として重要になってくる。
ルール無用の自給率オリンピック
筆者があえて農業GDP(林水産業含む)をとりあげたのには、理由がある。
GDPはオリンピックと同じく、一定のルールに従って国際的な順位が位置付けられる。ルールとは、決まった計算方法で各国政府が提出した統計にもとづき国際比較されるという意味だ。公正明大にして単純明快である。だから、農業GDPは、農業(林水産業含む)の国力を測る世界標準として根付いてきた。
同じく国際比較においてその実力が測られているはずなのが自給率だ。日本は「国際的に低い」という根拠で、国家政策でその向上が法制化されている。これまでに年間3000億円超、来年度からは5000億円超の予算がつけられる。それならば、自給率を計るルールも当然、公正明大であるべきだろう。だが、実際はどうか。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
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